テレワークの普及や働き方改革でオフィスのあり方に変化が起きている中、働く人の創造性を高める戦略的なオフィスとして注目を集めているのがクリエイティブオフィスです。

組織の創造性を高めたいと考える企業が注目するクリエイティブオフィスとは、どのようなオフィスを指すのでしょうか。

本記事ではクリエイティブオフィスの定義や注目されている理由、導入した際の効果や、実現のために必要なことをご紹介します。組織の創造性を高めて、イノベーション創出や企業価値の向上を図りたい方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。


<目次>

■クリエイティブオフィスとは

クリエイティブオフィスとは快適かつ機能的なだけでなく、感性を刺激して創造性を高め、知識創造を誘発するオフィスのことです。

2007年に経済産業省が策定した、ものづくりの価値軸「感性価値創造イニシアティブ」(※1)の一環として推進されるようになったオフィスの形で、アイデアの創出が必要な企業などで主に採用されています。

経済産業省と連携して推進活動をしている、一般社団法人ニューオフィス推進協会では、クリエイティブオフィスを「価値を生み出すフィールド」として捉え、イノベーションを可能にして「組織創造力を最大化する場」と位置付けています。(※2)

具体的にはデスクの場所が決まっていないフリーアドレスのオフィスや、仕事と無関係なリフレッシュスペースがあるオフィスなどがクリエイティブオフィスの代表的な例です。グリーンをふんだんに取り入れたオフィスや、モダンアートを取り入れたワークスペースなどもよく見られるケースでしょう。

クリエイティブオフィスと聞くと、デザイナーズオフィスのような洗練された空間をイメージする人もいます。しかし、単におしゃれなオフィスではありません。

居心地がよく五感を刺激する空間で、オフィスワーカーに行動変容をもたらし、クリエイティブなアイデアの発想を促すワークスペースであることという点が、クリエイティブオフィスに共通する特徴です。

※1 参考:経済産業省. 「感性価値創造イニシアティブ −第四の価値軸の提案−」.
https://www.nopa.or.jp/copc/pdf/kansei-gaiyou.pdf
, (参照2023-04-07).

※2 参考:三栖邦博. 「クリエイティブ・オフィス 〜経営とオフィスの融合〜」. 一般財団法人 国土計画協会.
https://www.kok.or.jp/project/pdf/05_141211_data2.pdf
, (参照2023-04-07).

■なぜ、クリエイティブオフィスが推進されている?

技術革新や情報化が進む現代は、経済活動だけでなく、働き方やライフスタイルも含めて社会が大きく変化する時代です。既存の商品やサービスが急速にコモディティ化する中、企業は生き残るためにもイノベーションを創出し、新しい商品やサービスを作り出す必要があるとされています。

そうした中、オフィス空間も単に作業や情報処理するだけの空間でなく、知識創造空間への転換が求められるようになりました。それがクリエイティブオフィスが推進されている大きな理由の一つです。

働く場所を知識創造空間へ転換するための具体的な行動理論が、経営学者で一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が提唱した「SECI(セキ)モデル」です。

SECIモデルは、以下の4つのフェーズで構成されます。SECIはそれぞれの頭文字です。

● Socialization(共同化)
● Externalization(表出化)
● Combination(連結化)
● Internalization(内面化)

SECIモデルでは4つのフェーズで、それぞれに3つの典型的行動を抽出した「12の知識創造行動」を取ることでアイデアが創出しやすくなるとしています。(※3)

次にSECIモデルの4つのフェーズと12の知識創造行動を詳しく見ていきましょう。

※3 参考:一般社団法人 ニューオフィス推進協会. CREATIVE OFFICE WEB. 「概要」“行動のSECIモデル(知識創造を誘発する12の知識創造行動)”. https://www.nopa.or.jp/copc/report04.html, (参照2023-04-07).

●Socialization(共同化)

Socialization(共同化)は、「刺激し合う」行動を指します。社員同士が刺激し合うための具体的な創造行動は次の3つです。

● 01 ふらふら歩く。
● 02 接する。
● 03 見る。見られる。感じ合う。(※4)

「ふらふら歩く」とは、歩いて他の部署を訪ねて話しかけたりしながら、他の部署で働く人の様子を知ることです。「接する」とは、顧客や先輩、同僚などとの雑談や会話のことです。製品や店舗、工場などに身近に接する行動も含みます。

「見る・見られる・感じ合う」は、先輩・同僚・他部門・工場・顧客・製品などの雰囲気を見たり見られたりして、感じ合うことを意味します。

共同化を促進するなら、部署ごとの仕切りをなくしたり、雑談できるカフェスペースを設けたりするとよいでしょう。オープンな共有スペースにソファを設置するなど、休憩時間に社員同士の会話が生まれやすくなるスペースを設けるのも効果的です。

※4 出典:一般社団法人 ニューオフィス推進協会. CREATIVE OFFICE WEB. 「概念図」. “12の知識創造行動とクリエイティブワークプレイスの概念図”. https://www.nopa.or.jp/copc/report06.html, (参照2023-04-07).

●Externalization(表出化)

Externalization(表出化)とは、アイデアを表に出すことを意味します。アイデアを表出するための具体的な創造行動は次の3つです。

● 04 軽く話してみる。
● 05 ワイガヤ・ブレストする。
● 06 絵にする。たとえる。(※5)

「軽く話してみる」は、まだまとまっていない漠然とした考えでも、人に軽く話してみることです。「ワイガヤ・ブレストする」は、自由な発想を臆せず積極的に言葉にしてみることを指します。「絵にする・たとえる」は、考えを絵や図にしてみる、あるいは例えられる表現を見つけることです。

表出化に有効なのは、ソファのある開放的な空間や、立ち話のしやすい空間を設けることです。メインデスクの近くに小さなテーブルを置いたり、予約なしで使えるミーティングスペースを設置したりしてもよいでしょう。ミーティングスペースにはホワイトボードを用意するとブレインストーミングに役立つはずです。

※5 出典:一般社団法人 ニューオフィス推進協会. CREATIVE OFFICE WEB. 「概念図」. “12の知識創造行動とクリエイティブワークプレイスの概念図”. https://www.nopa.or.jp/copc/report06.html, (参照2023-04-07).

●Combination(連結化)

Combination(連結化)は、つなげてまとめることを意味します。連結化をうながすための具体的な創造行動は次の3つです。

● 07 調べる。分析する。編集する。蓄積する。
● 08 真剣勝負の討議をする。
● 09 診てもらう。聴いてもらう。(※6)

「調べる・分析する・編集する・蓄積する」は、様々な資料を参考にしてみることを指します。それと同時に参考にした資料を自分なりに分析・編集した上で、他の人も使える形で蓄積していくことです。

「真剣勝負の討議をする」は、批判的な意見にも耳を傾けながら討議したり、意見を集約するべく議論したりする行動です。「診てもらう・聴いてもらう」は、資料をまとめてプレゼンテーションをして意見してもらうことなどを指します。

具体的なレイアウトとしては、「調べる・分析する・編集する・蓄積する」ための集中ブースの設置や、外に声が漏れず自由な討議ができるミーティングスペースの活用、プロジェクターがあるプレゼンテーションスペースの設置などが考えられるでしょう。

※6 出典:一般社団法人 ニューオフィス推進協会. CREATIVE OFFICE WEB. 「概念図」. “12の知識創造行動とクリエイティブワークプレイスの概念図”. https://www.nopa.or.jp/copc/report06.html, (参照2023-04-07).

●Internalization(内面化)

Internalization(内面化)は、自分のものにする行動です。アイデアを自分のものにするための具体的な創造行動は次の3つです。

● 10 試す。
● 11 実践する。
● 12 理解を深める。(※7)

「試す」は、実際に試作してみたり使ってみたりして、より深く理解する行動です。「実践する」は、仕事で実践・応用して納得するための行動です。「理解を深める」は、繰り返して実行してみたり工夫してみたりしながら、自分の中に落とし込むことです。

アイデアを形にするための試作スペースや実験室、商品やサービスを実際に顧客に説明するための商談スペースなどを設けると、アイデアをより内面化できるようになります。

※7 出典:一般社団法人 ニューオフィス推進協会. CREATIVE OFFICE WEB. 「概念図」. “12の知識創造行動とクリエイティブワークプレイスの概念図”. https://www.nopa.or.jp/copc/report06.html, (参照2023-04-07).

■クリエイティブオフィスによる効果

クリエイティブオフィスを導入すると、次のようなメリットが期待できます。

● 企業ブランドの向上
● コミュニケーションの活性化
● クリエイティビティの向上
● 生産性の向上
● モチベーションの向上

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

●企業ブランドの向上

クリエイティブオフィスの導入で、企業ブランドの向上を実現できる場合もあります。働く環境は社員のモチベーションやワークスタイル、人的ネットワークの質にも影響を与えるものです。そのために働く環境が向上すると労働の生産性やサービスの品質、ブランド力の向上につながるケースがあります。

働きやすい環境を提供して、企業のブランド価値を高めると、優秀な人材の確保や定着にも有効でしょう。また、企業ブランドを向上させると、同業他社との差別化も可能になります。

●コミュニケーションの活性化

社内コミュニケーションの活性化も期待できます。フリーアドレスやカフェスペース、リフレッシュスペースなどの誰でも利用可能なオープンな空間があると、通常はあまり交流がない他部署の社員との交流が増えるためです。

他部署の社員との何気ない会話が刺激となって、新しい価値観や発想が育まれる可能性もあります。また、部署や上司・部下などの垣根を越えたコミュニケーションや雑談も生まれやすくなるでしょう。社内のコミュニケーションが活発になると、情報共有の促進や創造性の向上にもつながります。

●クリエイティビティの向上

社員の感性を刺激して創造性を高める効果を期待できるのがクリエイティブオフィスの本来のメリットです。感性を刺激する空間で創造性が高まると、新しいアイデアの創出も促進されるでしょう。

前述した12の知識創造行動を取りやすい空間デザインや動線を採用すると、さらなるクリエイティビティの向上も期待できます。また、コミュニケーションの活性化もクリエイティビティの向上につながる要因です。

●生産性の向上

社員同士の連携がスムーズになるため、業務の効率化が図れるメリットもあります。

仕切りのないオープンな空間で社員同士が互いの様子を視認しやすくなることも、よい効果をもたらすでしょう。互いの仕事の進捗状況や課題を共有すると、アドバイスやサポートなども積極的に行いやすくなります。

オープンな空間のワークスペースなら、他部署の動向や状況を把握しやすいため、部署間の連携もしやすくなるはずです。

●モチベーションの向上

従業員のモチベーションの向上が期待できるのもメリットです。働く場所が快適な空間であれば、仕事にもポジティブに取り組みやすくなります。

オープンな空間で働くため、同僚の成果や仕事の進捗状況が分かりやすい点も、モチベーションアップに役立つはずです。切磋琢磨して互いに刺激し合う関係性が自然に広まり、社員の知的好奇心や自主性を高める可能性もあります。

●リモートワークへの移行がスムーズに

フリーアドレスを採用する場合、社員が移動しながら好きな場所で働けるようICTツールの活用が不可欠です。クリエイティブオフィスのために整備するICTツールは、そのままテレワークに転用できます。まだ、テレワークがそれほど定着していない企業でもクリエイティブオフィスを採用すると、スムーズにテレワークへ移行できるでしょう。

■クリエイティブオフィスの実現に必要なこと

クリエイティブオフィスを実現するためには、ワークスペースのデザインやレイアウトを変更するだけでは不十分な場合もあります。以下で紹介するポイントも意識しながら実現してみてください。

●社員に対する目的の共有

クリエイティブオフィスを採用する際は、社員に対して導入の目的や意義を理解してもらう必要があります。知識創造行動をしやすいレイアウトにしても、意識的に活用してもらわないと十分な効果が期待できないでしょう。

目的の周知が不十分な場合、フリーアドレスを導入しても、つい同じ席に座り続ける人もいます。席が固定化してしまうと、コミュニケーション活性化などのメリットを享受できません。導入の目的が、新たなアイデアの創出にあることを事前の周知で理解してもらい、意識的に活用してもらいましょう。

●ICTツールの活用

効果を確実なものにするためには、ICTツールの活用が不可欠となります。移動しながら仕事ができるよう、社内のネットワーク環境を整備したり、書類をクラウド管理したりしてペーパーレス化を図るなどの準備も必要でしょう。

テレワークがメインになると、互いの状況を把握しにくくなりコミュニケーションが不十分になることも考えられます。チャットツールやグループウェア、社内用SNSなども活用してコミュニケーションが取れるようにしておくとよいでしょう。

●空間設計

クリエイティブオフィスでは、社員が知識創造行動をしやすい空間設計が大切です。例えば、互いに刺激し合うためにオープンスペースやカフェスペースを設置する、アイデアを創出しやすいよう集中ブースやリフレッシュスペースを確保する、アイデアをまとめやすいようプレゼンテーションの場を設けるなどが挙げられます。

空間設計を変更する際、参考にしたいのは、実際に利用する社員の声です。現状で不便な点はないか、どうするとよりコミュニケーションが活性化するかなど、社員の意見を聞きながら改善していくことが推奨されます。

■まとめ

イノベーション創出のためにも社員の創造性を育むことが大切な時代となりました。もし、今のオフィスがアイデアの生まれにくい環境なら、感性を刺激して創造性を高めやすいクリエイティブオフィスの採用も検討してもよいかもしれません。

クリエイティブオフィスを実現するなら、野村不動産グループが運営するレンタルオフィス「H¹O」の活用もご検討ください。H¹Oは高品質で多彩なサービスと高度なセキュリティを備えたレンタルオフィスです。

H¹Oでは自由でクリエイティブなオフィスを提供しています。個室や打ち合わせスペースだけでなく、ラウンジや緑に囲まれた屋上テラスなどのリフレッシュスペースも充実しているオフィスです。フレキシブルかつ多様な働き方に合わせてご利用いただけます。

社員の多様な働き方をサポートしながら、創造性を高めるクリエイティブオフィスを自社以外の場所に用意するのも選択肢の一つです。クリエイティブオフィスの導入をお考えなら、ぜひH¹Oの利用もご検討ください。

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