オフィスに植物が増えるだけで、オフィスの環境・印象は大きく変化する場合が多いです。業務効率や生産性の向上、従業員のモチベーションアップなどの効果が期待できるとして、企業の働き方改革の一環として導入されるケースもあるなど、昨今ではオフィス緑化に注目が集まっています。

とはいえオフィス緑化とは、どのようなものか具体的に分からない方や、どのような効果が期待できるのか分からない方もいらっしゃるでしょう。

そこで、オフィス緑化を導入するメリット・デメリットや導入方法に加え、効果を最大限引き出すポイントをご紹介します。


<目次>

■オフィス緑化とは?

オフィス緑化とは、一口に言えばオフィスに花や観葉植物を置くことです。社員のデスク周辺や会議室、受付など、オフィスのいたるところに花や観葉植物などを配置し、緑あふれるオフィスに生まれ変わらせることで、従業員のリラックス効果や生産性向上、企業ブランディングなど、さまざまな効果が期待できます。

環境省が2019年1月~2月に行ったアンケート調査(※)でも、オフィス緑化を導入することで「社内が明るくなった」「風通しが良くなった」など職場雰囲気の改善や、リラックス効果やリフレッシュ効果、集中力向上が実感できたという事例が報告されています。(※)

つまりオフィス緑化は、単にオフィスの雰囲気を変化させるだけでなく、職場環境改善の効果を期待できる取り組みといえるでしょう。
またオフィスで働く自社従業員への効果だけでなく、外部からのイメージアップの効果もあるため、企業ブランディングにもつながる可能性があります。良好な職場環境の構築や働き方改革の実現などにより、求職者や消費者からのイメージアップを図りたい企業にもおすすめです。

※参考:環境省. 「オフィス緑化に関する優良事例調査報告書」.
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/private_participation/health/greenoffice_report.pdf

●オフィスに最適な緑視率とは?

オフィスの緑視率は一般的に、約10~15%が最適とされています。緑視率とは、視界に占める緑の割合表す指標のことで、2004年に国土交通省が行った調査によると、緑視率が高い場所ほど「安らぎのある」「爽やかな」「うるおいのある」空間だと感じる人の割合が高いことが分かっています。(※)

ただし緑が多ければ多いほど良いというわけではなく、植物が多過ぎてもストレスや圧迫感を抱く原因となり得ます。そうなってしまうと従業員のパフォーマンス低下につながってしまうため、適度な量を配置することが重要といえるでしょう。

実際のところ国土交通省の同調査では、緑視率25%以上で「緑が多い」と感じ始めると分かっています。オフィスに植物を配置する際は、全ての空いているスペースに植物を置くなど、むやみな配置を行うのではなく、従業員の視界にどれだけ映るのかを考慮し、10~15%以内、多くても25%以下にとどめるようにしましょう。

※参考:国土交通省. 「都市の緑量と心理的効果の相関関係の社会実験調査について」. 平成17年8月12日(金).
https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/04/040812_3/01.pdf

■オフィス緑化のメリット

オフィス緑化を導入するメリットとして、大きく5つの項目が挙げられます。いずれも企業・従業員の双方にメリットがあります。5つのメリットを紹介するので、オフィス緑化導入の検討材料としてみてください。

●1.従業員の健康促進

オフィス緑化を導入すると、さまざまな面から、従業員の健康促進効果が期待されます。

植物が身の回りにある環境では副交感神経が強く作用し、血圧の上昇や緊張が和らいでリラックスした状態を保ちやすくなります。千葉大学が2011年10月に行った学術調査では、卓上の生花を見ると心身をリラックスさせる副交感神経の活動が29%アップし、反対にストレス神経である交感神経の活動は25%ダウンするというデータが発表されています。(※1)加えて豊橋技術科学大学が2011年2〜3月に行った学術調査でも、植物なしの場合に比べて、植物ありの場合は生理的ストレス(疲労・眠気など)が軽減されることが確認されています。(※2)オフィスに植物があることで、従業員の余計な緊張や生理的なストレスを、和らげてくれる効果が期待できるといえるでしょう。

また愛媛大学が1994年1~3月に行った学術調査によると、VDT作業中に植物を見ると視覚疲労が緩和されることや、VDT作業後に植物を見ると視覚疲労が回復すると分かっています。(※3)眼精疲労は頭・首・肩をはじめ、体全体の不調につながるケースもあります。つまりオフィス緑化によって目の疲れを緩和させることは、全身の健康維持にも関与するでしょう。

※1 参考:千葉大学環境健康フィールド科学センター. 「花きに対する正しい知識の検証・普及事業」.
https://www.mizuho-rt.co.jp/case/research/pdf/flower2014_02.pdf


※2 参考:豊橋技術科学大学. 「葉植物のグリーン ア メニティ効果に関する研究」.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2012.1/0/2012.1_961/_pdf/-char/ja


※3 参考:愛媛大学. 「観葉植物を見ることがVDT作業に伴う視覚疲労に及ぼす影響」.
https://www.greenleafips.com/wp-content/uploads/2020/06/47_138.pdf

●2.環境負荷の軽減

植物が空気中の汚染物質を吸収してくれることで、環境負荷の軽減につながるのもメリットといえるでしょう。空気中には一酸化炭素や有機化合物、浮遊粉じん、窒素化合物、二酸化硫黄といった、空気汚染物質が含まれており、閉ざされた空間であるオフィス内には充満しやすい傾向にあります。

植物は光合成の原料となる二酸化炭素以外にも、こうした化合物を吸収・分解してくれる性質があります。天然の空気清浄機として機能してくれるので、電気代のかかる機器を使用しなくともきれいな空気を保ちやすくなり、省エネにつながるのもポイントです。

●3.生産性の向上

植物をオフィスに配置することは、生産性の向上にもつながります。オフィスは働く場所なのである程度の緊張感を持って過ごす従業員は多いでしょうが、過度な緊張はストレスや心身の疲労につながったり、モチベーションを低下させたりする可能性があります。オフィス緑化には適度なリラックス効果があるため、結果として作業効率が改善し、生産性の向上につながる効果が期待できるでしょう。

環境省が2019年1~2月に行ったアンケート調査によると、オフィス緑化を導入している企業で働く従業員の45%が、モチベーションがアップにつながっていると感じています。(※1)緑がもたらす効果の中でも「落ち着きのある空間」「居心地の良さ」「リラックス」といった効果を実感している人が多いことからもわかるように、オフィスの緑化は快適な労働環境の創出につながるといえるでしょう。

実際に、豊橋技術科学大学が2011年2〜3月に行った学術調査でも、植物なしの場合よりも植物ありの方が、作業効率がアップする結果となっています。(※2)

※1 参考:環境省. 「オフィス緑化に関する優良事例調査報告書」.
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/private_participation/health/greenoffice_report.pdf


※2 参考:豊橋技術科学大学. 「葉植物のグリーン ア メニティ効果に関する研究」.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2012.1/0/2012.1_961/_pdf/-char/ja

●5.企業ブランディング

オフィス緑化は企業のイメージアップにつながり、企業ブランディングの効果が期待できます。オフィス緑化により「従業員がノンストレスで働ける職場環境」「コミュニケーションの取りやすいオフィス」を実現している企業として世間に認知されれば、取引先や消費者、求職者などからのイメージアップにつながるでしょう。

環境省が2019年1~2月に行ったアンケート調査では、オフィスが緑化されたことのメリットとして、以下のような事例が報告されています。(※)

● 来社するお客様にオフィスを褒められる
● 採用面接でよい印象を与えられている
● 会社のイメージが良くなった
● 採用面でのイメージアップができた
● オフィス内の雰囲気が明るくなった
● 風通しの良さそうな雰囲気にガラっと変わったように感じる
● 職場を自慢できるという意見が増えた

社外へよい印象を与えるのはもちろん従業員の会社への愛着心なども増すため、社内外のイメージアップにつながる企業ブランディング方法といえます。

※参考:環境省. 「オフィス緑化に関する優良事例調査報告書」.
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/private_participation/health/greenoffice_report.pdf

■オフィス緑化のデメリット

多くのメリットがあるオフィス緑化ですが、同時にデメリットもいくつかあります。良いよい面・悪い面どちらも把握した上で、導入するか否かを検討してみましょう。

●導入・維持のコスト

導入や維持にコストがかかる点は、オフィス緑化のデメリットといえます。植物そのものはもちろん、鉢やプランター、花瓶、肥料・栄養剤など、植物の成長に欠かせないものをそろえる必要があるため、ある程度の初期費用が必要となるケースが多いです。

また肥料や栄養剤、水などの維持費用も発生するでしょう。毎月・毎年などの単位で必要となる金額を踏まえた上で、導入を検討することをおすすめします。

コストを抑えるためには、フェイクグリーンを購入したり、植物をレンタルしたりする方法もあります。オフィス環境の改善や企業ブランディングのための投資と捉えて、会社の予算やイメージに合うものを導入しましょう。

●日々のメンテナンス

日々のメンテナンスが必要なとなることも、オフィス緑化を導入するデメリットとして挙げられます。多くの場合は生きた植物を飾るためには、水やりや肥料の使用、枯葉の掃除・剪定、葉っぱのホコリ掃除など、メンテナンスをする世話する必要があります。

植物の日々のメンテナンスは、水やりの際に担当者同士や、通りがかった他の従業員と話すことにつながるなど、コミュニケーションのきっかけともなり得るでしょう。とはいえ従業員に毎日の業務に加えてメンテナンスを行ってもらうのは、彼らにとって負担となってしまうかもしれません。

オフィスが広く管理しきれないなど、メンテナンスが負担になることが懸念される場合は、観葉植物のメンテナンスを外部のプロに委託するのもおすすめです。

■オフィス緑化の導入ステップ

オフィス緑化のメリット・デメリットが分かったところで、実際に導入するステップを押さえておきましょう。
す。

●オフィス緑化の予算を決める

まずは、オフィス緑化の予算を決めましょう。

植物や鉢・プランター、花瓶、肥料・栄養剤といった初期費用と、導入後継続的にかかる水や肥料・栄養剤といった維持費用の両面から予算を設定するのがおすすめです。オフィス緑化の費用は、緑化する面積や植物の数・種類によって異なるので、緑化させる範囲や規模も決めましょう。

なおオフィス緑化のメンテナンスを外注する場合は、手入れの外注費も予算に含めておくと、実際にかかる費用を把握しやすくなるはずです。かけられる予算に応じて、どのような植物を選ぶのか、どのように維持管理するのかなどが異なるため、最初に予算を決めるのは重要なステップといえます。

●オフィス緑化の担当者を決める

次にオフィス緑化の計画進行・管理担当者を決めましょう。「どのようにオフィス緑化を進めるか」という問題の舵を取る担当者を決めておくことで、計画的に緑化を進めやすくなるはずです。

オフィス緑化は従業員でも行えるため、社内で担当者を決める方法もありますが、先述のとおり社外のプロに委託することも可能です。オフィス緑化をプロに任せれば、専門的な視点から「エントランスには外部の人たちに好感を持ってもらえる雰囲気に」「ミーティングルームは意見を出しやすい落ち着いた雰囲気に」などと、場所に応じたより効果的な緑化を行ってくれるでしょう。

また生きた植物を使用する場合、当然ながらメンテナンス手入れは必須なので、植物の維持管理を行う管理担当者も決めましょう。維持管理も含めてプロに任せてしまうのも一つの手です。

●動線を踏まえて配置を決める

オフィス内の動線を踏まえて、邪魔にならないような配置を決めましょう。やみくもに植物を設置すると動線の妨げになりって、業務に支障が出たりストレスの原因になったりするかもしれないです。先に具体的なレイアウトや必要なスペースを想定して、全体的なイメージを固めておきましょう。

オフィスの床に植物を配置する以外にも、棚やデスクの上に置く・天井からつるす・壁やパーティションに設置する・床に敷くなどの方法があります。特に天井からつるしたり、壁やパーティションに設置したりすると、限られたスペースを有効活用できるでしょう。どのように配置すれば動線を妨げないか、自社オフィスに合ったレイアウトを考えてみてください。

■オフィス緑化の効果を最大化させるポイント

最後にオフィス緑化の効果を最大化させる3つのポイントをご紹介します。

●オフィスにおすすめの植物を選ぶ

オフィス緑化の際は、数ある植物の中から適した植物を選ぶことが大切です。見た目やサイズ感なども大切ですが「管理のしやすさ」を重視するケースも多いでしょう。

特に自社で管理をする場合、なるべく手間のかからない植物を選べば、従業員の負担を軽減できるはずです。管理しやすい植物の具体的な特徴には、以下のようなものが挙げられます。

● 枯葉が落ちにくい
● 水やりの回数が少ない
● 成長が遅く大きくなりにくい
● 日当たりが悪くても育ちやすい
● 虫がつきにくい

日光が当たりにくい環境でも問題なく育つ植物や、枯葉・虫が少なく掃除に手間取らない植物を選ぶのがおすすめです。モンステラ・パキラ・サンセベリアといった植物は、枯れにくく虫が付きにくいだけでなく、水やりの頻度も少なくて済むでしょう。特にモンステラ・パキラは日陰でも育つため、日当たりの悪い場所や閉め切ったオフィスなどでも育てやすい植物といえます。

オフィス緑化に使用する植物は「管理のしやすさ」を念頭に置き、自社のオフィス環境でも育ちやすい植物を選びましょう。

●照明と温度管理に気を付ける

オフィス緑化の際は、照明と温度管理に気を付けて、植物が枯れないよう注意しましょう。植物の生育に光は欠かせないものですが、植物によって必要な光の量は異なります。中には直射日光で枯れてしまうものもあるので、事前に調べておきましょう。

例えば、モンステラやパキラのように半日陰を好む植物もあれば、アロエのように強い光を好む植物、テーブルヤシのように窓際から離れても平気な耐陰性の強い植物もあります。

植物によって光量の好みは異なるので、日陰・日向で置く植物を変更したり、照明の強さを変更したりと、適切な配置・照明管理をするのがおすすめです。

ちなみに室内の色温度や色偏差(Duv)を変えると植物の見え方も変わるので、調光調色できる照明器具を導入すると、空間デザインの演出に役立つでしょう。

また温度管理も重要なポイントといえます。室内で育てられる常緑植物の多くは熱帯や砂漠に自生していることが多いため、寒さに弱い傾向にあり、15〜25度ぐらいの室温に保つのがよいとされています。温度計を設置して、植物にとって適した環境を維持できるようにしましょう。

●定期的なメンテナンスを徹底する

オフィスの緑化を導入した後は定期的なメンテナンスを徹底して、きれいな状態を維持しましょう。

メンテナンスを怠れば植物は弱ったり枯れたりしやすくなります。オフィス緑化の効果が薄れるのはもちろん、見た目が悪くなることで管理の行き届いていないオフィスに見えてしまうという懸念があります。水や栄養剤などを与える以外にも、葉に付いたホコリを拭き取り、枯れ葉の剪定や病害虫を駆除して、植物の生育の妨げになるものを排除しましょう。

またメンテナンス手入れしやすいよう、植木鉢にこだわるのもポイントといえます。例えば貯水タンク内蔵で自動的に水を与えてくれるものや、トレー付きで水をこぼしても大丈夫なものなど、日々の管理が行いやすくなる商品も販売されているので、必要に応じてうまく活用しましょう。

■まとめ

オフィスや企業の個性に合った緑化を施すことで、従業員の健康促進や生産性の向上、企業イメージのアップなど、社内外に対してさまざまな良い効果が期待できます。導入・維持のコストやメンテナンスの手間などはありますが、多くのメリットを得られる取り組みといえるでしょう。

とはいえ、オフィスの大きさや形状、企業の個性などに合わせて素人がオフィス緑化を進めるのは難しく、従業員が業務の傍ら管理するのもあまり現実的ではないかもしれないです。難しい場合や、プロに管理してもらいたい場合は、メンテナンスそのものを外部業者に委託するのも一つの手です。

野村不動産グループの「H¹O」は、複数の拠点で緑を取り入れているサービスオフィスです。誰もが「自分の居場所」だと思えるオフィスづくりをお手伝いしており、入居後の満足度は90%以上となっています。オフィス緑化を検討している担当者の方は、ぜひお気軽に資料請求・オフィス見学予約をお問い合わせください。

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