働き方改革が推進されていく中で、さまざまなオフィスで導入が進んでいるのが「カフェスペース」です。

オフィスは「効率的な作業の場」だけでなく「コミュニケーションから新しいアイデアを生む場」としての役割が求められ始め、いかに社内のコミュニケーションを活発化させるかが重要な課題となりつつあります。そのような中、コミュニケーションを促進すると期待されているものにあたるのが「オフィスのカフェスペース」といえるでしょう。

とはいえ「カフェスペースを導入して意味があるのか」「どのように導入すべきかわからない」と思われる方も多いはずです。

そこで、オフィスにカフェスペースを導入するメリットや導入時の注意点・課題や、実際の導入事例などをご紹介します。オフィスへカフェスペースの導入を検討されている担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。


<目次>

■オフィスカフェとは?

オフィスカフェとは、オフィス内に設けられたおしゃれなカフェのような空間のことです。別名オフィスラウンジと呼ばれることもあり、デスクや会議室とは別の、リラックスやリフレッシュができる空間としての役割を持つ傾向にあります。

従来の社員食堂や休憩室はあくまで昼休みなど休憩時に使用するものであり、ミーティングルームやワークスペースとして使用されることは少なく、家具やインテリアも必要最低限しかないのが一般的でした。

対してオフィスカフェは、利用者に肩の力を抜いて安らげる場所として過ごしてもらうために、飲み物だけでなく、植物やおしゃれな木目調のテーブル・カウンター・チェアなどにもこだわっていることが多いです。単に「お茶やコーヒーなどのドリンクを飲めるスペース」というだけではなく、街中のカフェのような落ち着いた雰囲気を持つオフィスカフェも多数あるでしょう。

オフィスカフェは個人がリフレッシュする場としての利用の他、社員同士もしくは社外の人とのコミュニケーションを行う場としても利用されるのが一般的です。後ほど詳しく解説しますが、休憩や昼食以外にも、デスクワークや打ち合わせ、来客の対応、Webミーティング、勉強会、イベント、セミナー、面接など多目的なコミュニケーションの場として活用するケースもあるでしょう。さらには社員が就業中に集中力が切れた際の切り替えの場としても活躍する可能性があります。このように、オフィスカフェはさまざまな角度から、有意義に利用できる可能性があるのです。

■なぜオフィスにカフェスペースを導入するのか

オフィスにカフェスペースを導入する大きな理由として、従業員のエンゲージメントアップの必要性が挙げられます。

エンゲージメントとは、いかに従業員が会社への貢献意欲や愛着心、思い入れがあるかの指標です。高ければ高いほど生産性が高まったり、離職率が低下したりすると考えられているため、エンゲージメントは企業にとって重要な指標の一つといえます。

エンゲージメントは普遍的に重要な要素ですが、近年では労働人口減少と中途採用市場の活発化によって、より重要度が高まっているようです。実際のところ、国立社会保障・人口問題研究所が2023年4月に発表した推計によると、日本の総人口は50年後には現在の7割となり、2070年には8,700万人にまで減少すると予測されています。(※)

将来的な労働人口の大幅な減少が予測されるため、企業には従業員を自社へ定着させる努力が必要です。

また近年では若い層を中心に転職がポピュラーになってきていることから、人材獲得競争の過熱が続いています。働く場所や時間をできるだけ制約されたくないなど、働き方の多様化も加速していることから、求職者に選ばれる人材求心力が一層必要となっていくでしょう。

こうした背景からエンゲージメントの向上は、企業にとって重要な課題となっており、オフィスにおけるカフェスペースの導入が、効果的な施策の一つとして考えられるようになっているのです。

※参考:国立社会保障・人口問題研究所. 「日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要」.
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp2023_gaiyou.pdf

■オフィスにカフェスペースを導入するメリット

オフィスにカフェスペースを導入するメリットはさまざまですが、主に5つのメリットが挙げられます。1つずつ見ていきましょう。

● 1.社内のコミュニケーション活性化

社内のコミュニケーションを活性化させられることは、カフェスペースを導入する大きなメリットといえます。

会議室やミーティングルームとは違ったカジュアルな空間なので、ちょっとした雑談はもちろん意見交換や交流など、分け隔てなく社員同士がコミュニケーションできるでしょう。

また、部署の垣根を越えた交流につながるのもポイントです。

一般的なオフィスの場合、他部署の執務スペースは気軽に入りにくく、社員同士が部署を越えて交流する機会は少なくなりがちです。

その点カフェスペースがあれば所属にかかわらず気軽に人が集まるため、部署を越えたコミュニケーションが生まれる可能性があります。結果的に業務上の連携やコラボレーションにつながることもあるでしょう。

社内の風通しがよくなることで、社員同士の結束が高まったり会社への愛着が増したりと、人間関係が悪いことによる離職率の低下にもつながると期待できます。

● 2.創造性・生産性の向上

カフェスペースがあるとコミュニケーションが活発化することで、個人だけでなく、チームや組織としての生産性向上が期待できます。通常、特定のメンバーだけで仕事をしているとアイデアが限られたりワンパターンになったりしがちですが、カフェスペースでの部署を越えたコミュニケーションにより、新たな切り口や今までにない視点のアイデアが生まれるかもしれません。

加えて、カジュアルな雰囲気の雑談の場であることで、会議やミーティングでは発言しにくいと感じている若手の意見をキャッチアップできたり、雑談の中でヒントが生まれたりする可能性もあります。

また長時間オフィスで仕事を続けていると、集中力が切れたり、上司の目から解放されたいと感じたりすることは、誰しもに起こり得るでしょう。

そのような際にカフェスペースがあれば、一息ついてから気持ちを切り替えて仕事に臨めるので、リフレッシュによる生産性の向上につながると考えられます。わざわざ社外へ出かけなくても気持ちを切り替えられるので、時間を無駄にすることなく、メリハリのある働き方ができるはずです。

つまりカフェスペースはチーム全体の創造性・生産性の向上に対して、有効なものといえるでしょう。

● 3.社員のストレス解消

カフェスペースがあると、リラックスできたり雑談しやすくなったりするため、社員のストレス解消にも効果的と考えられます。

ホッと一息つけるカフェスペースがあることで、忙しく業務をこなす合間にもコーヒーブレイクを取りやすくなり、ストレスを小まめに解消できるはずです。

また社員同士でコミュニケーションを取りやすくなることで、相談や悩みの共有などがしやすくなるというメリットもあります。

● 4.企業ブランディング

オフィスのカフェスペース導入は社内・社外への企業ブランディングとしても有効です。

カフェスペースを備えたオフィスを構えることは、労働環境をよくしようという考えの具現化のため、求職者が「働きたい環境だ」と感じやすくなるでしょう。採用活動における大きなプラス要素となるため、優秀な人材を獲得しやすくなる効果が期待できます。採用ホームページやSNSなどで、積極的にアピールするのもおすすめです。

もちろん社外だけでなく、社内へのブランディング効果も期待できます。カフェスペースの設置自体が企業の姿勢を表すことになり、「当社は社員の肉体的・精神的な健康に配慮している」というメッセージを間接的に示せるので、社員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。会社への帰属意識や定着率のアップなど、組織の持続的な成長にもつながると考えられます。

またカフェスペースを開放し、社員以外でも利用できるようにすると、消費者や外部からの企業イメージアップになる可能性があります。

街中のカフェに負けないような落ち着いた上質な空間や、ハイクオリティなコーヒー・軽食を提供することで、ダイレクトに企業の宣伝・ブランディングにつながるはずです。

● 5.多目的に活用できる

オフィスのカフェスペースは、単なる休憩室とは異なり、多目的に活用できるのもメリットといえます。

カフェ本来の機能である社員の休憩・食事によるリフレッシュや雑談の場以外にも、例えば打ち合わせや来客の出迎え、Webミーティング、勉強会、イベント、セミナー、面接などのために利用する方は多いでしょう。夜はバーとして就業後の社内コミュニケーションの場としたり、使用しない時間帯はイベント・セミナー会場として開放したりといったケースもあるようです。

■カフェスペースを導入する際の注意点と課題

オフィスにカフェスペースを導入する際は、多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点と課題があります。ここではあらかじめ把握しておきたい、注意点・課題を3つご紹介します。

●1.騒音や集中力の問題

1つ目の課題は、オフィスにカフェスペースができることで騒音が増え、一部の社員にとっては集中力の妨げとなってしまう可能性がある点です。

執務スペースである仕事場とカフェスペースが同じ空間にある場合、カフェスペースでの雑談やミーティングの声が、自席で仕事中の社員の集中力を乱す懸念があります。また気分転換のために自席を離れてカフェスペースで作業している人の邪魔になる可能性もあります。

とはいえ、仕事の邪魔にならないよう遠慮していては、カフェスペースで気軽に話せなくなってしまい、コミュニケーションの活性化につながりづらくなるでしょう。

騒音問題が起きないようにするには、カフェスペースと執務スペースを離す・防音ガラスを設置するなど、双方の邪魔にならないよう工夫することが大切といえます。集中スペースを設けるのも一つの手です。

● 2.予算やスペースの確保

予算やスペースを確保しなくてはならないのも、オフィスにカフェスペースを設ける上での課題といえます。

必ずしも広いスペースが必要というわけではありませんが、間取りを変更するためのリノベーションやレイアウト変更、必要な設備の購入など、金銭的にも時間的にも多くのコストがかかり、本格的なカフェスペースを設けようとするほど、初期費用以は高くなってしまうでしょう。またカフェスペースを運営するには、コーヒー代金や観葉植物の維持費など、ある程度のランニングコストも必要です。

● 3.社員への理解促進と教育

カフェスペースが何のためにあるのか、社員にしっかりと理解してもらえるかどうかも重要です。有効な活用方法が周知できていなければ、十分な効果が見込めない可能性があります。

例えば、カフェスペースの利用者がいつも同じメンバーで固まってしまっていたり、飲み物を取りに行くだけだったりしては、真のカフェスペースの意義が薄れてしまうでしょう。

オフィスにカフェを導入する際は、カフェスペースがコミュニケーションを促進するための場であることや、リフレッシュするための場であることなど、設置目的を社員にしっかりと伝えることが大切といえます。

またコミュニケーションが自然に発生するように、さまざまな工夫を凝らすのもおすすめです。例えば、以下のような工夫が考えられます。

● 人通りの多い場所に設置して、自然と立ち寄りやすくする
● 外部の方にも開放して、偶発的な交流・情報収集を促進する
● おいしいコーヒーやお菓子など、特別感のあるサービスを充実させ、多くの社員に利用してもらう
● 飲み物やお菓子の種類を定期的に変更して、利用頻度の向上や利用者同士の会話のきっかけにつなげる
● ドリンクカウンターをカフェの奥に設けて、飲み物を取るまでに偶発的な会話が起こるようにする
● インフォボードを設置して、情報交換の場とする

社員への理解促進・教育を施すのはもちろん、カフェスペースそのものに思わず立ち止まって会話したくなるような工夫をして、カフェスペースの効果を十二分に引き出しましょう。

■カフェスペースの効果的な設計パターン

カフェスペースの効果的な設計パターンは、大きく2つに分けられます。

どちらのパターンを採用するかは、予算やスペース、想定する用途などによって異なります。それぞれ詳しくご紹介するので、どちらのパターンが適しているか検討してみてください。

● 本格的なカフェスペースを設置

まず挙げられるのが、本格的なカフェスペースを設置するパターンです。本格的なカフェスペースは、従業員のリフレッシュやコミュニケーションの促進、イベント活用などさまざまな用途で活躍するでしょう。
「社員のパフォーマンスを引き出したい」「コミュニケーションを活性化させたい」「イベント・セミナーにも活用したい」「企業ブランディングにつなげたい」など、目的や活用が明確な場合におすすめです。

例えばカフェカウンターを設置したり、寛げるくつろげるソファとテーブルを設けたりと、バリエーション豊かな座席を用意すると、目的に応じてマルチに活用できるようになります。靴を脱いで過ごせるような小上がりを作るのもよいでしょう。

キッチンスペースを設ければ、夜にはバースペースにしたり、社員が料理を作ったりと、用途をさらに広げることも可能です。

ただし、本格的なカフェスペースを設置するには大きなスペースや多くの費用が必要となるため、スペース・予算ともに余裕が必要です。

● オフィス内にカフェスペースを設置

予算やスペースの都合で、本格的なカフェスペースの導入が難しい場合は、オフィス内の一部をカフェスペースとして活用するパターンもあります。

例えば以下のような工夫を施すことで、省スペースかつコストを抑えたカフェスペースの実現が可能です。

● カフェスペースを別室にしない:執務スペースや隣接した場所のレイアウトを変更して設けましょう。気軽に立ち寄りやすいカフェになり、カフェスペース内の人に話しかけやすくなる効果もあります
● 水回りのは工事はしない:給湯室の活用・排水タンク付きのコーヒーマシンの導入など、工事が要らないよう工夫しましょう
● セルフサービスにする:セルフサービスにして、誰でも気軽に利用できるようにしましょう。飲み物以外に軽食やお菓子もあると、利用者同士の話が弾みやすくなります
● ハイカウンターを設置する:仕事中と姿勢を変えられるカフェ風の空間を作ることで、手軽に気分転換しやすくなります
● デザイン性の高い家具を配置する:木目調のテーブルと植物を設置するだけでも、カフェ風の空間を演出できます。他とは違う床材を使用して、視覚的に異なる空間にしましょう
● ワゴンでコンパクトなカフェを設ける:コーヒーマシンやお菓子を置いたワゴンを設置すると、自然と人が集まるスポットを生み出せます

こうした工夫を施すことで、費用の問題でも面積の問題でも、カフェスペース設置のハードルがグッと下がります。

■カフェスペースの活用事例

最後にカフェスペースの活用事例として、野村不動産グループが運営する「H¹O」の中でも「H¹O 渋谷神南 」を利用する企業の例をご紹介します。

H¹O 渋谷神南は、全10階建てのオフィスビルで、以下3つのカフェスペースが用意されています。

● 1階:エレベーターホール横に、入居者および来客者限定の共用スペースである「HUMAN FIRST SALON」が設置されており、緑に囲まれた空間を活用できる
● 2階:共用カフェラウンジがあり、パーテーションを配したデスクスペースと、オフィスコンビニやドリンクコーナーを利用できる
● 8階:同じく共用カフェラウンジが用意されている

【A社の活用事例】
社内での打ち合わせや、気分を切り替えて作業したい際に、カフェスペースを使用しています。特に1階の共用スペース「HUMAN FIRST SALON」は来客を迎える際に使用しており、女性インフルエンサーの方やファッション関係の方からも羨ましいと言ってもらえるような、自慢のスポットです。1階・2階・8階と3つの景色が異なるフロアにカフェスペースがあるので、これらを使い分けられるのも大きな魅力です。

面接の際にもオフィスを褒められる機会が多いため、採用に関してもよい影響が出ています。

【B社の活用事例】
基本的には自分たちので個室で仕事をし、打ち合わせには2階の会議室を使用しています。

集中力が切れて気分を変えたいときに、1階や2階のカフェスペースを使うことが多いです。1階の「HUMAN FIRST SALON」は季節ごとに飾られている花が違うので、癒されるのはもちろん季節の移り変わりを感じられることも楽しみの一つです。2階のカフェスペースでは、水の流れる音を聞きながらリフレッシュします。

また、軽い打ち合わせを行いたいときは、8階のラウンジを利用することもあります。

■まとめ

オフィス内にカフェスペースを設けると、社内のコミュニケーションの活性化や新たなアイデアの創出、社員のストレス解消、企業ブランディングなど、多様な方面でメリットが期待できます。休憩や作業以外にも、イベントやセミナー、打ち合わせなど、多目的に活用できるでしょう。

野村不動産グループが運営する「H¹O」では、カフェスペースを設けたレンタルオフィスを複数展開しており、入居後の満足度は90%以上にのぼります。例えばH¹O 渋谷神南では、共有のカフェスペースが充実しているため、自社のスタイルに合った活用ができるでしょう。2階や8階のカフェラウンジはどちらもエレベーターすぐの場所に設置されているため、訪れた人との会話が発生しやすい構造になっています。また複数の貸室・会議室の中心にラウンジが位置しており、どの部屋を利用する際にもラウンジを通過するので、コミュニケーションが誘発されやすいレイアウトです。

オフィス見学予約も承っているので、カフェスペースのあるオフィスをお探しの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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