スタートアップやベンチャーが副業社員を雇用するメリット・デメリットについて
公開日 2023.09.07 更新日 2023.09.07
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- スタートアップやベンチャーが副業社員を雇用するメリット・デメリットについて
スタートアップ企業やベンチャー企業では、優秀な人材の確保が課題の一つといえます。そんな中、新たな雇用の形として挙げられるのが「副業社員」の存在です。副業社員とはどのような人材のことで、スタートアップ企業やベンチャー企業が採用すると、どのようなメリットがあるのでしょう。
本記事では、スタートアップ企業やベンチャー企業が押さえておきたい副業社員について詳しくご紹介します。副業社員を雇用するメリット・デメリット、副業社員の成果物の管理について契約書に記載すべき内容、優秀な副業社員を採用するために必要なこと などをまとめましたので、人材の採用にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
<目次>
■スタートアップ・ベンチャー企業での副業人材の採用が注目をされている理由
厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」や「モデル就業規則」を公表したことを受け、2018年より世間では副業の解禁が浸透しつつあります。就業規則で副業を禁止している企業は未だ多いものの、副業を許可する企業が急速に増えたことに伴い、副業を始める人も増えてきました。
スタートアップ企業やベンチャー企業は積極的に副業社員を採用している傾向にありますが、その背景にあるのは、スタートアップ企業やベンチャー企業の慢性的な人材不足です。
少数精鋭で事業を行うために、経験や知識が豊富で優秀な人材を確保したいと考えているスタートアップ企業やベンチャー企業は多いでしょう。しかし、即戦力となるような優秀な人材は競争率が高いのが一般的です。スタートアップ企業やベンチャー企業は大手企業と比べると知名度が低いことが多く、求職者によっては、良い労働環境というイメージを持ってもらえない可能性もあります。そのため、スタートアップ企業やベンチャー企業が優秀な人材を確保するにはハードルが高い場合が多く、採用における課題の一つとなっています。
そこで、即戦力としてすぐに活躍できる副業人材が注目されるようになりました。副業社員という形であれば、正社員と比べて採用のハードルが低く、必要なスキル・能力を持った人材を効率よく確保できます。
参考:厚生労働省. 「副業・兼業」.
https://www.mhlw.go.jp/stf/sei... (参照 2023-07-14).
■副業人材・社員とは

副業人材や副業社員は同義の言葉ですが、具体的にはどのような人のことを指すのでしょう。
副業社員とは、ある企業の社員という本業を持ちながらも、本業の就業時間外で自身が持つ専門的なスキルや能力を生かして仕事を請け負っている人のことを指します。簡単にいえば、副業で収入を得ている会社員のことです。また、広義では 業務委託として個人で仕事を請け負っている士業以外のフリーランスや、育児や介護の間に自宅で働く在宅ワーカーも 副業人材・社員に該当します。
副業社員にはエンジニアやマーケター、HR、広報、デザイナー、編集、ライターなどさまざまな需要があり、それぞれ自分が得意とする領域で活躍しています。
●副業社員の志向性について
副業社員の志向性は、以下のようなものが考えられます。
● 自身の持つスキル・能力と現在の収入にギャップを感じている
● 自分のスキルや能力を生かしてやりたい仕事にチャレンジしたい
● さらにスキル・能力を磨いて成長したい
人によって志向は異なるものの、現状に満足しておらず、さらに飛躍したいと考える人が多い傾向にあるといえるでしょう。
■副業社員を雇用するメリット
副業社員を雇用するスタートアップ企業やベンチャー企業が増えている要因の一つには、企業側にとってもメリットが多いことが挙げられます。スタートアップ企業やベンチャー企業が副業社員を雇用すると、どのようなメリットが得られるのでしょう。6つのメリットを見てみましょう。
●メリット①採用競争力が低くても副業社員であれば雇用できる
大手企業に比べると採用競争率が低い企業でも、副業社員であれば優秀な人材を雇用できるチャンスが高まります。
知名度や実績をこれから積み上げる段階のスタートアップ企業やベンチャー企業は、求人を出しても大手企業のようには応募が集まりにくいため、限られた応募者の中から優秀な人材を見つける必要がある場合が多いです。その分企業カルチャーにマッチする人材に出会える可能性も低く、出会えた際も提示できる待遇が大手企業より見劣りしてしまいがちです。
一方で優秀な人材は高待遇で働いているのが一般的です。そのため、そこで優遇されているうちは転職を考えることも少なく、採用競争率が低いスタートアップ企業やベンチャー企業による引き抜きは難しい場合が多いでしょう。
しかし、貪欲に自分のスキルや能力を磨き、チャンスがあれば、今よりもさらに高みを目指したいと考えている人は一定数いるはずです。そういった人材にとって、本業を続けながら新たなことにチャレンジできる副業は 理想的な制度といえます。そこで、スタートアップ企業やベンチャー企業で働くことが視野に入ると考えられます。
スタートアップ企業やベンチャー企業にとって副業社員の募集は、本来であれば雇用先として選んでもらうのが難しいような優秀な人材に、自社の即戦力として活躍してもらえる手段となるでしょう。
●メリット②採用~入社までの時間が短い
副業社員であれば、採用を決定してから入社までの期間が短い傾向にあります。スピード感を求めているスタートアップ企業やベンチャー企業にもフィットしやすいでしょう。
正社員の転職では、今の会社で働きながら転職活動を始める人も多いです。その場合、転職先に内定をもらってから今の会社へ退職の意思を伝え、引き継ぎや有休消化をしてから、新しい会社へ転職となるのが一般的です。引き継ぎにかかる期間などにもよりますが、採用決定から入社まで2〜3カ月程度かかるケースが多いでしょう。
しかし、刻一刻と状況が変わりやすいスタートアップ企業やベンチャー企業では、2〜3カ月もすれば状況が大きく変わり、採用した人材に任せるはずの仕事の内容が大幅に変わってしまうことも考えられます。その結果ミスマッチが起きてしまい、早期離職につながってしまう可能性があります。
副業社員としての雇用であれば、引き継ぎや有休消化は基本的に必要ないでしょう。「今」必要な人材に「すぐ」働いてもらいやすいため、スピード感を持って会社の成長を目指せます。
●メリット③モチベーションが高い
副業社員はモチベーションが高い傾向にあるのもメリットの一つといえます。
正社員で雇用されている人のなかには、やりたい仕事でなかったとしても「待遇がいいから続けている」「安定が欲しい」「家族を養うため」「転職は面倒」と考え、働き続けている人もいるでしょう。
本業に加えて副業をしている人・興味を持っている人の場合、もちろん収入をアップさせたいと考えて副業をする人もいますが、待遇よりも自身のやりがいや成長を求めている人が多いと考えられます。「自分の力を試したい」「やりたい仕事に挑戦したい」といった動機であれば、モチベーション高く業務を行ってくれる可能性が高いといえるでしょう。
●メリット④ミスマッチの解消になる
副業社員を雇用すれば、ミスマッチの解消にもつながる可能性があります。
スタートアップ企業やベンチャー企業は少数精鋭のことが多いため、正社員として雇用した社員のミスマッチによる早期離職が起きると、大きなダメージを受けてしまいやすいです。周囲の社員のモチベーションも下がってしまう恐れがあるでしょう。
副業社員の場合、まずインターンシップのような形でお試しとして副業で働いてもらうこともできるので、採用後のミスマッチが起こりにくいです。万が一副業での雇用中に早期離職が起きても、雇用される側にとっても、企業にとってもダメージは比較的少ないでしょう。
●メリット⑤期間限定での採用が可能
副業社員であれば、期間限定の採用も可能な場合があります。
スタートアップ企業やベンチャー企業の場合「正式に雇うほどではないが、今、特定のスキルを持った人材が必要」などのように、スポット的に人材が必要になる機会が発生することもあるでしょう。正社員として雇った場合、原則雇用期間を定めての雇用はNGです。
その点、副業社員なら短期間での雇用が可能なため、必要なときに必要な人材を確保できるでしょう。もちろん、雇用する時点で同意を取る必要はありますが、魅力的なプロジェクトや実力を発揮できる業務なら、短期でも雇用に同意する人はいるはずです。
潤沢な予算がなく、正社員を雇用し続けるのが難しいスタートアップ企業やベンチャー企業であっても、必要な人材をスポットで確保できるのは大きなメリットといえます。
●メリット⑥人件費の最適化が可能
人件費の最適化によりコストを抑えられることも、スタートアップ企業やベンチャー企業が副業社員を雇用するメリットといえます。
正社員を雇用する場合、給与として支給するお金以外にも、保険・税金など、さまざまなコストがかかってきます。予算に限りがある場合、一人採用するだけでも大きな負担となってしまうでしょう。
しかし、副業社員で業務委託契約を結ぶ場合は、保険や税金といったコストは不要となるはずです。また、スキル・能力や経験を持っている人材のため、人材育成にかかるコストも抑えられると期待できます。労働の対価としての報酬を支払うだけでよいので、人件費を最適化できるでしょう。
■副業社員を雇用するデメリット
メリットの多い副業社員の雇用ですが、デメリットも存在します。副業社員の雇用を検討しているのなら、デメリットを把握し、どのようにカバーするかを考えることも大切でしょう。
基本的に副業社員は本業を持っているため、副業ばかりに時間を割けないという人が多いと考えられます。優先するのはあくまでも本業で、本業の就業時間以外で副業を請け負っているため、働ける時間は限定的となるケースが多いです。そのためどのような仕事でも任せられるわけではないというのが、デメリットの一つといえます。副業社員に期待し過ぎず、頼りきりにならない意識を持ちましょう。
また、副業社員は、正社員と比べ「組織に所属している」という意識を持ちにくいです。そのためコミュニケーションがおろそかになってしまい、モチベーションが低下してしまう可能性があります。正社員と副業社員の間でモチベーションに大きな差ができてしまうことも考えられます。副業社員に対してどのようなサポートを行うかは、企業にとっての一つの課題といえるでしょう。
■副業人材の成果物の管理について契約書に記載すべき内容
副業社員を雇用する場合、雇用契約を結ぶケースと業務委託契約を結ぶケースがありますが、一般的には業務委託契約を結ぶことの方が多いようです。業務委託契約の場合、主に以下の3つの契約種別があります。
● 委任契約:成果物を求めず、委託した法律行為の処理に対し報酬が発生する
● 準委任契約:成果物を求めず、委託した事実行為の処理に対し報酬が発生する
● 請負契約:成果物の完成を約束し、成果物に対し報酬が発生する
成果物の完成が約束されるのは、請負契約のみです。請負契約を結ぶ際、成果物の管理に関して契約書にどのような内容を記載すべきなのか把握しておきましょう。
●契約金額
成果物に対して支払う報酬金額と、支払いの時期について明記します。報酬金額は、税別・税込かも明確にしましょう。また、支払う方法や、振込の場合の振込手数料を委託者・受託者のどちらが負担するかも明記しておきます。
●成果物
成果物の内容に関しては、可能な限り詳しく明記します。求める品質や納入方法、納期も詳しく記載しましょう。詳細が膨大な文量になる場合は、別紙で記載しても大丈夫です。
●危険負担
危険負担とは、委託者が本人の責任なく成果物の納品や業務遂行ができなくなった際、どちらが債務を負担するのか示したものです。万一の際にトラブルにならないよう、必ず記載しましょう。
●検収基準
委託者側が成果物の検収を行う際の基準を明記します。どのような点をチェックして検収を行うのかを分かりやすく記載しましょう。
●契約不適合責任
契約不適合責任とは、納入された成果物に不備があった場合、委託者に対して負う責任のことです。請負契約は成果物を完成させる契約なので、不備やミスがあった場合、受託者が契約不適合責任を果たす必要があります。
契約不適合責任の内容は、状況ごとに記載します。状況ごとに責任を追求できる期間や方法を明確に示しましょう。
●知的財産権
知的財産権は、成果物に対して発生する可能性のある知的財産権を受託者・委託者のどちらのものとするかを明記します。また受託者・委託者がどのように成果物を利用できるかも詳しく記載した方が安心です。
■優秀な副業社員を採用するために必要なこと

専門的なスキル・能力を持ち、必要に応じて働いてもらえる副業社員は、スタートアップ企業やベンチャー企業にフィットしやすい人材といえます。優秀な副業社員を採用するためには、どのようなことが必要なのでしょうか。
●採用したい副業人材の明確化
例えば、同じITスキルを持った副業社員でも、人によって持ちうるスキルや経験、人格などは異なるはずです。自社で活躍できる優秀な副業社員を採用するためには、どのような人材を求めているか明確にしておくことが大切でしょう。
副業社員を採用する目的を明確にした上で、具体的にどのようなスキル・能力、性格・価値観を持った人材を募集するのか洗い出しましょう。既存社員からの声を拾い上げるのもおすすめです。
●副業社員の採用基準・条件
副業社員の採用基準や条件も併せて明確にしておくとよいでしょう。
まずは、本業で就業している企業が副業を許可していることが第一条件といえます。副業社員に依頼する仕事を遂行できるスキル・能力を持ち合わせているかどうかも重要な条件となるでしょう。単に「ITスキル」などの抽象的な基準ではなく、具体的に求める資格の名称や経験年数なども明確にしておくと、採用をスムーズに進めやすくなるはずです。
また、副業社員に支払う報酬についても十分に検討しておきましょう。副業社員は高いスキルや能力を持つ人が多いですが、スキルや能力が高くなればなるほどコストがかかる傾向にあります。必要なスキル・能力を踏まえた上で報酬を決定しましょう。
さらには企業カルチャーやビジョンに共感してくれるかどうかも重要です。いくら短期の副業社員であってもミスマッチが起きれば、正社員雇用ほどのダメージはないとはいえ、相応のダメージを受ける可能性があります。
■採用後の副業社員をうまく活用するポイント
どんなにスキルや能力が高い副業社員でも、採用する側がうまく活用できなければ、求める働きは期待できないでしょう。最後に、採用後に副業社員をうまく活用するポイントをご紹介します。
●任せる仕事内容の明確化
どのような仕事を任せたいのかを具体的にし、明確化しておきましょう。ただ単に「どのような成果物が必要」とするのではなく、依頼する目的や範囲、求める品質を詳しく明示するのがおすすめです。仕事内容が明確になっていなければ、ミスマッチも起きやすくなってしまいます。
任せる仕事内容を決めるときは、取捨選択することも必要でしょう。先述の通り副業社員は本業があるため、限られた時間しか副業に時間を使えない場合が多いです。正社員とは掛けられる時間が異なるので、副業社員が持つスキルや能力を有効に活用できる仕事を見極めましょう。常に密なコミュニケーションを必要とせず、専門性の高い仕事なら、副業社員に向いているはずです。
任せる仕事内容に合わせて、どのようなことを期待するのかも示しておくとよいです。副業社員の採用により、どのような課題を解決したいのか、どのような成果を達成したいのかを示しましょう。
●副業社員が活躍しやすい環境整備
副業社員が持つスキル・能力を最大限生かしてもらうためには、副業社員が活躍しやすい環境を整えておくことも大切といえます。限られた時間で働く副業社員がコミュニケーションを取りやすいように、ITツールの導入を検討するとよいでしょう。
副業の契約が終わった後、自社への正社員としての入社を希望するなら、信頼関係を築くことも大切でしょう。コミュニケーション不足に陥りやすい副業社員は、正社員との間に情報格差が生まれやすくなります。全ての情報を開示する必要はありませんが、業務に支障がないよう配慮しましょう。
ただし副業社員は本業を持っていますから、密なコミュニケーションを要求し過ぎると負担になってしまう可能性もあります。進捗確認方法や納入方法などは、大きな負担がなく対応してもらえるように検討しましょう。
■まとめ
本記事ではスタートアップ企業やベンチャー企業が副業社員を雇用するメリット・デメリットをはじめ、契約書に記載すべき内容や優秀な副業社員を採用するために必要なことなどをご紹介しました。優秀な人材の確保が難しいスタートアップ企業やベンチャー企業において、副業社員の採用はメリットが非常に大きいといえます。採用したい副業社員の特徴や任せる仕事の内容を明確にし、自社で活躍できる副業社員を採用しましょう。
人材確保と同様に、スタートアップ企業やベンチャー企業を悩ませる課題の一つにオフィス環境が挙げられます。自社に最適なオフィス環境に悩んでいるのなら、レンタルオフィスを検討してみるのはいかがでしょう。柔軟な働き方に対応しやすいレンタルオフィスは、副業社員のようにスポット的に人材を採用するスタートアップ企業やベンチャー企業にも適しています。
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