スタートアップ企業やベンチャー企業が成功するために欠かせない存在に、営業やマーケティングを後方からサポートしてくれるバックオフィスが挙げられます。第一線で売上を作り出すポジションではありませんが、バックオフィスなしに円滑な業務は行えないといっても過言ではないでしょう。

しかし、採用できる人材の数やかけられる人件費に限りがあることが多いスタートアップ企業やベンチャー企業では、バックオフィスを採用するタイミングが課題になるケースも考えられます。果たしてバックオフィスを採用するのに最適なタイミングは、いつなのでしょう。

本記事では、バックオフィスの採用に悩むスタートアップ企業やベンチャー企業の担当者の方に向けて、バックオフィスの重要性や課題、採用のタイミングなどをご紹介します。採用条件や注意点もご紹介するので、本記事を参考にして、最適なタイミングで自社に必要なバックオフィス人材を採用しましょう。


<目次>

■スタートアップバックオフィス(SBO)の重要性

スタートアップ企業やベンチャー企業が成功するには、バックオフィス業務を行う人材の存在が欠かせないでしょう。バックオフィス業務は、経理・会計・総務・庶務・一般事務などの業務の総称です。営業やマーケティングのように、顧客と接したり現場の第一線で活躍したりして会社の業績に直接関わることはありませんが、企業活動を陰で支える重要な業務といえます。

バックオフィスの業務には、人やモノ、金、情報などを最適な状態でコントロールする役割があります。そのためバックオフィスが回っていなければ、企業全体も回らなくなってしまう場合もあるでしょう。反対にバックオフィス業務が回っていれば、限りあるリソースを有効に活用しながら業務を効率化することが可能となるはずです。企業としての成長スピードの加速につながるケースもあるでしょう。

また、バックオフィス業務が適切に行われていれば、データの透明性を確保しやすくなるので、ステークホルダーに対してきちんとした数値を提示できるはずです。スタートアップ企業やベンチャー企業が、企業としての信頼を得るためにも、バックオフィスは必要不可欠といえます。正確なデータを基にして戦略を立てられるため、迅速な意思決定ができるようにもなるでしょう。

■スタートアップのバックオフィスの課題

スタートアップ企業やベンチャー企業に必要不可欠といえるバックオフィスですが、スタートアップ企業やベンチャー企業ならではのバックオフィスに対する課題もあります。

まずスタートアップ企業やベンチャー企業では、バックオフィスの存在が後回しにされやすいことが大きな課題といえます。スタートアップ企業やベンチャー企業の場合、攻めの企業活動で、企業の急速な成長を目指す企業も多いでしょう。そのため、バックオフィスにかかる採用費や人件費などは後回しにされてしまいやすいです。

しかし、環境が整備されておらず、バックオフィス業務が円滑に回っていなければ、企業としての守りが弱くなってしまいます。ステークホルダーからの信頼を得ることも難しく、最適な事業戦略を立てることもできなくなってしまう可能性があるでしょう。

スタートアップ企業やベンチャー企業の場合、起業時の手続きなどを経営者が行った流れから、創業後も経営者がバックオフィス業務を行うケースもあるようです。経営者がバックオフィスに関する知識を持っていることは大切ですが、バックオフィス業務ばかりに気を取られていると、顧客対応や事業戦略などに集中できず、企業としての成長を遅らせることになってしまうことが懸念されます。

また、バックオフィス業務を行える人材を採用するとしても、スタートアップ企業やベンチャー企業で採用できる人材の数には限りがあるでしょう。とはいえスタートアップ企業やベンチャー企業が理想とするオールラウンダーなバックオフィス人材を見つけることはかなり難しく、なかなか採用できない傾向にあります。このことも課題の一つといえるでしょう。

バックオフィス人材は流動性が低く、そもそも求人数もあまり多くない傾向にあります。特に中堅層にあたる20代後半以降のバックオフィス経験者は、転職する際に待遇や条件のよい企業を探していることも多いので、高待遇の大企業に比べると、スタートアップ企業やベンチャー企業は不利になってしまいがちです。

■バックオフィスはいつ採用すべきか?

「バックオフィスをいつ採用する か」という問題は、スタートアップ企業やベンチャー企業の多くが直面する問題です。バックオフィスを任せる人材は、どういったタイミングで採用すべきなのでしょう。

投資家がスタートアップ企業の状況を把握するための段階的な指標の一つに、「投資ラウンド」というものがあります。投資ラウンドは、以下の6段階です。

1. シード期
2. アーリー期
3. シリーズA
4. シリーズB
5. シリーズC
6. シリーズD

いつの段階で採用するかは、企業によっても最適なタイミングが異なりますが、一般的には業務量が膨れ上がる「シリーズAの準備開始まで」に採用するのが望ましいです。シリーズAは、事業活動が本格的になり、規模が拡大してPMF(プロダクトマーケットフィット)が見えてきている段階にあたります。シリーズAに入ると、シード期やアーリー期と比べて、バックオフィス業務量が増えてくるはずです。弁護士や税理士とのコミュニケーション量も増え、PRや採用にも力を入れるようになるでしょう。このシリーズAの準備開始までにバックオフィス人材を採用しておけば、企業カルチャーやビジョンなども理解してもらいながら、発生するさまざまな事務作業に対応してもらいやすくなると期待できます。

早期採用にはメリット・デメリットがあるため、「結局いつが最適な採用のタイミングなのか」と悩んでいる方も多いでしょう。早期採用する場合のメリット・デメリットをご紹介します。

●早期採用のメリット

バックオフィスを早期採用すると、初期の段階から業務の内容を把握してもらえるため、経営 基盤を盤石にしやすいです。スタートアップ企業やベンチャー企業の場合、単純作業の多いバックオフィス業務は、ざっくりとした管理でスタートするケースもあるでしょう。そうすると企業が成長した後、これまでのプロセスの整備や管理に余計なリソースが必要になってしまいます。

その点バックオフィスを早期採用していれば、スタートの段階から把握できるので、後々無駄なリソースを割く必要がなくなるはずです。また担当する領域が未経験だったとしても、実務を通して学べるため、人材育成にもつながっていくと期待できます。

もう一つの大きなメリットとして挙げられるのが、経営者の近くで企業のビジョンや価値観を理解してもらえることです。初期のバックオフィス業務には、経営者の想いや考えをくみ取り、言語化していくことも求められるでしょう。バックオフィス人材を早期採用すれば、初期からビジョンや価値観を共有できるため、それを業務に反映させやすくなるはずです。経営者との距離が近いので、得意としていること、苦手としていること、意思決定や考え方のクセなどを知れることも、後々大きな資産となっていくでしょう。

さらには早期採用をすれば、経営者がバックオフィス業務を行う必要がなくなります。スタートアップ企業やベンチャー企業の場合、最初のうちは完全に離れることは難しいかもしれませんが、必要以上の労力をバックオフィス業務に割くことはなくなるでしょう。経営者が会社の成長のために行う業務に専念できるので、企業の成長スピード向上にもつながるはずです。

●早期採用のデメリット

バックオフィスを早期採用するデメリットは、初期のバックオフィス業務を行う人材に対し、それほどコストがかけられない場合が多いことです。スタートアップ企業やベンチャー企業が創業して間もない頃は、さまざまな部分で資金が必要となる傾向にあります。そのためバックオフィスを採用するとしても、最初から高待遇のポストを用意することは難しいのが一般的でしょう。前述した通り、バックオフィス経験者は待遇や条件がよい求人に流れがちなので、求人を出しても思うように応募が集まらない可能性もあります。

また小規模の事業のバックオフィス業務は、1人の人が経理・会計・総務・庶務・一般事務など幅広い業務を行わなければならないケースもあります。事業を立ち上げたばかりのうちはそれぞれの業務量はそれほど多くなくとも、幅広い知識が必要となるでしょう。バックオフィス経験者だとしても、あらゆる領域に経験があるわけではなく、一つの領域を専門的に行っている人も多いです。幅広い領域に挑戦したいと思う人材に出会えるまでに時間がかかり、採用が難航してしまうことも考えられます。

■スタートアップバックオフィス採用条件

スタートアップ企業やベンチャー企業がバックオフィス業務を行う人材を採用するにあた って、重要な採用条件があります。

まず一つ目には、特定の領域のプロフェッショナルであるよりも、柔軟な対応ができることが挙げられます。バックオフィスの実務経験や、専門的な知識を持っていることも重要ですが、さまざまな領域の業務に対応しなければならないスタートアップ企業やベンチャー企業のバックオフィスは、柔軟さがあるかどうかが非常に重要といえます。あらゆる領域において発生する些細な問題にも柔軟に対応し、不要を切り捨て、必要なことに時間を割ける人材かどうかも見極める必要があるでしょう。

幅広い業務に対応する中でも、特に優先して整備したいのは労務や経理などの領域です。労務の仕事は、給与関係や入社に関する労働契約関係などを整備するのに必要です。労務に強い人材がいれば、今後重要となってくる就業規則づくりもしやすいでしょう。経理は、事業活動で必ず必要になるお金を管理する業務です。透明性を確保するためにも、経理の知識や経験は必要になるでしょう。

また、企業カルチャーやビジョン、価値観に共感しているかどうかも外せないポイントといえます。いくら経験豊富で高い対応力がある人材だとしても、企業カルチャーなどにマッチしていなければ、早期離職を招いてしまう可能性があります。経営者の近くで業務を行うことも多く、経営者の考えを形にしていく作業も求められるため、企業カルチャーなどに共感していれば、円滑に業務が行いやすいでしょう。

さらには細かい作業を慎重に進められる正確さも、バックオフィス人材に欠かせない要素といえます。特に契約やお金に関する内容は、小さなミスが大きな問題に発展するケースもあるため、細かい確認を正確に行えるかどうかを重視しましょう。

その他、積極性があり、経営者に対してYES・NOをはっきり伝えられるかどうかも大事な要素といえます。少数精鋭のスタートアップ企業やベンチャー企業の場合、体制が整っている大手企業や中小企業のように、言われたことだけをやるというわけにはいかないシーンもあるでしょう。バックオフィスであっても、主体的に考えて行動できることは大切といえます。また経営者の意見に対してバックオフィスの立場から、企業の成長につながる提案をくれる人材なら、よりよい事業活動ができるでしょう。

●業務委託やパートタイムも視野に

バックオフィス人材を採用する際に視野に入れたいのが、業務委託での契約や、パートタイムでの雇用です。前述した通り、バックオフィス人材は流動性が低く、経験者は待遇や条件がよい求人に流れる傾向にあります。正社員で採用しようとすると、なかなか人材に巡り会えない可能性もありますが、業務委託やパートタイムを視野に入れれば、最適な人材に出会える可能性も高くなるでしょう。

初期のバックオフィスはさまざまな領域に対応しなければならないものの、それほど業務量が多くないこともあります。業務委託やパートタイムなら、必要な業務だけスポット的に対応してもらうことも可能でしょう。バックオフィスへの採用コストをあまりかけられないという企業側の課題も、解決しやすくなります。

■バックオフィス採用における注意点

大手企業などで特定の領域だけのバックオフィス業務を行っていた人を採用した場合、どこまでの作業を担ってよいのか混乱してしまうケースも考えられます。そのような人にスタートアップ企業やベンチャー企業のバックオフィス人材として成長してもらうためには、経営者が「この領域の業務を行ってほしい」ということを明確に伝えてあげることが大切でしょう。

また、業務委託でバックオフィス人材を確保する場合、情報漏えい防止を徹底しましょう。企業としての信頼を失墜させぬよう、必ず秘密保持契約を結び、万が一情報が漏えいした際の対処法も検討しておいてください。

●赤字にならない最適な人数とは?

バックオフィス人材を採用することで、営業やマーケティングなどのフロントオフィス業務に支障が出てしまうことも避けたいところです。

一般的には全社員の10%前後の割合になるように、バックオフィス人材を確保するのがよいといわれています。10名規模の場合で1名です。全社員の30%を超えてしまうと赤字になる可能性が高まるとされているので、採用の際は人員数も考慮しましょう。

■スタートアップバックオフィス採用におけるポイント

スタートアップ企業やベンチャー企業がバックオフィス採用をする際は、バックオフィスを少数精鋭にする意識を持つようにしましょう。事業が拡大すると、バックオフィスにかかる経費は膨らむ傾向にあります。少数精鋭で業務が行える体制を作り、コストを抑えることで、安定した経営が目指せるはずです。

また、優秀な人材に対しては適正な報酬を与えることが、離職を防ぐことにつながる場合もあります。能力・スキルに見合った報酬を提示すれば、モチベーションがアップし、経営 基盤を盤石なものにできるでしょう。

●組織戦略に基づいた人材の確保

近年は守りのバックオフィスではなく、前線で活躍できる人材をそろえた「攻めのバックオフィス」が主流になりつつあります。

スタートアップ企業やベンチャー企業でバックオフィスの人材を採用する際も、組織戦略をベースにして、各部門の業務負担にも対応できる攻めのバックオフィスを実現できる人材を確保しましょう。攻めのバックオフィスが実現できれば、会社全体の効率化が図れるでしょう。

■まとめ

本記事ではスタートアップ企業やベンチャー企業におけるバックオフィスの重要性や課題、採用のタイミングなどをご紹介しました。スタートアップ企業やベンチャー企業では、バックオフィスの存在が後回しになりがちです。しかし、企業が成長していくためにはバックオフィスの必要性は無視できないでしょう。本記事を参考にしつつ、自社に最適なタイミングでバックオフィス人材の採用を検討しましょう。採用コストが十分にかけられない企業やなかなか人材が見つからない企業は、業務委託やパートタイムでの採用も検討してみることをおすすめします。

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