スタートアップ企業におけるフェーズとは?EXIT・資金調達方法についても解説
公開日 2023.12.15 更新日 2024.01.10- レンタルオフィス・サービスオフィスのH¹O
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会社を立ち上げるスタートアップ時期は、課題をスムーズに把握するために、自社のフェーズを意識するとよいでしょう。フェーズが理解できると、現在抱えている課題や、その解決方法が見えてくることがあると考えられます。
本記事では、スタートアップのフェーズとその特徴をご紹介します。またそれぞれのフェーズにおける課題や失敗例、資金の超達方法についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
<目次>
■スタートアップは成長に応じて5つのフェーズに分けられる
スタートアップのフェーズは、成長に応じて5段階に分類できるといわれています。
そもそもスタートアップとは、急成長を伴う起業、もしくは新規事業の立ち上げを示す言葉として使われています。必ずしも新しい会社を立ち上げる必要はありませんが、いずれにしても革新的なビジネスモデルに基づいて、短期間で大きく成長を遂げるビジネスを指し、スタートアップと呼ぶことが一般的です。
スタートアップのフェーズは以下の5つに分類できます。
● シード期:起業直前の、アイデアの創出と仮説検証の時期
● アーリー期:実際に起業し、一定数を販売でき収益が上がる時期
● ミドル期:収益が安定し事業拡大する時期
● レイター期:収益拡大し新規事業の立ち上げをする時期
● EXIT:上場あるいはM&Aによる事業売却
それぞれのフェーズについて詳しくは後述します。
■スタートアップのシード期とは
シード期は、実際に起業あるいは事業立ち上げをする直前の、まだ種の段階を示しています。起業に踏み切ってはいないものの、どのような事業にするか、どう収益を上げるか、どのくらいの見込みかというビジネスモデルの原案が既に存在する状態を指すのが一般的です。
ビジネスモデルの原案に対して、実際にどの程度の収益になるかを突き詰めるのも、シード期のタスクといえるでしょう。仮説検証を行い、起業してからビジネスとして成り立つよう、ビジネスモデルの確立を行う必要があると考えられます。
また、シード期は資金調達についてもある程度のアイデアがあり、資金集めを始める段階ともいえます。仮説検証に費用が必要になる場合、シード期は企業としての実績がなく社会的信用度が低い傾向にあるため、企業家の力だけで融資を受けることは難しい可能性があります。信用保証協会に保証してもらうことができれば、少ない実績でも融資を受けやすくなるでしょう。ただし信用保証協会に対して信用保証料を支払わなくてはならず、この点がデメリットともいえます。
●シード期の課題やリスク
シード期は、収益のない状態からスタートするケースがほとんどです。しかし、シード期のビジネスにはお金が掛かることもあります。その分の資金については、預貯金からの持ち出しをしたり、融資で集めた資金を使ったりしなければならない場合もあるでしょう。
具体的な収益がないにもかかわらず資金繰りを始めなくてはならないのは、大きな課題といえ、リスクとなり得ます。先述のとおり信用も実績もまだないため、一定の期間は赤字状態が続くことも見越した準備をしておく必要があるといえます。
また、次段階以降のビジネスがしっかりと収益を伴うものになるかどうかは、シード期の計画の緻密さによって左右されるでしょう。事業計画や事業コンセプトについてシード期にしっかりと煮詰めることが重要といえます。
■スタートアップのアーリー期とは
アーリー期とは、実際に起業を実施した直後の状態から売上が安定し、事業が軌道に乗るまでの時期を指します。商品やサービスの具体的な開発・販売に力を入れるべき時期といえるでしょう。
アーリー期には、PDCAを回しながら自社の商品やサービスを改善していくケースが多いです。改善を繰り返しつつも徐々に売上が安定してくる様相が見えるか否かは、その後のビジネスの安定性や拡大の可否を大きく左右するといってよいでしょう。
スタートアップ企業とはいえ拡大路線を考えるなら、アーリー期にはある程度の増員が必要となります。5名前後から、事業内容によっては20名前後まで拡大することを考えてもよいでしょう。
ただし、資金繰りがしやすい時期では決してないため、積極的な資金面での体力増強が求められる時期ともいえます。
●アーリー期の課題・失敗例
先ほども触れましたが、アーリー期に最も大きな課題となるのは、資金繰りといわれています。商品やサービスの開発は完了しており、実際に製造や販売に入る時期に該当するため、製造費や人件費、広報費が多く掛かり始めるでしょう。一方で、収益が安定的でないのがアーリー期の特徴でもあるため、このような状況の中で、収支のバランスを上手に取る必要があると考えられます。
そのためアーリー期に失敗しやすいといわれるポイントは、コスト管理です。人件費を増やし過ぎてしまったり、特定の社員に費用を投じることで他の社員から反感を買ったりする可能性があります。一人だけ給与の高いエキスパートを採用するようなケースは、資金繰りの面からも人事管理の面からも扱いが難しく、熟考が必要といえるでしょう。
■スタートアップのミドル期(グロース期)とは
ミドル期は、グロース期と呼ばれることもあります。企業がアーリー期を抜けて成長フェーズに入り、売上がやや持続してきた状態をミドル期と呼ぶのが一般的です。
ミドル期に入ると、企業にはある程度「お得意さま」と呼べる顧客がつくことが想定されます。毎月一定の売上が見込めるため、一定の利益も期待できるでしょう。通常であればアーリー期の赤字を取り戻し、収支がプラスに転じる時期にあたります。
ミドル期の企業はまだ成長フェーズにあり、新規の顧客開拓も継続的に行われる傾向にあります。収支がプラスに転じるとはいえ、設備投資や事業所や部署、部門の増設などで大規模な資金が必要になる場合もあるでしょう。
従業員数はアーリー期よりも多く、20人を超える企業が増えてくる時期とされています。とはいえ、これは必ずしも20人を超えなければならないということではありません 。また、業種や業態にもよりますが、人数が増えれば人事部や労務課など、さまざまな部署およびルールの設置も必要になってくるはずです。組織が大きくなる分、どうしても自由度が減る傾向にあることを、念頭に置いておくとよいでしょう。
●ミドル期(グロース期)の課題・失敗例
ミドル期では、増員した人材を巡る動きが課題になることが多いでしょう。ミドル期は事業が拡大するため採用を増やさなければならない一方で、離れていく人員も増えがちといわれています。創業メンバーやアーリー期を支えてくれた人材が、志を違えて辞めていったり、さらに条件のよい企業に移っていったりする可能性があるのです。
目標が見えなくなることや企業の理念が自分の生き方に合わなくなることで、大切な社員が辞めてしまうという失敗は、ミドル期に多い傾向といえます。そのため、ミドル期には自社が何を目的に企業活動を行っているのかを明確にしつつ、社員一人ひとりの人生の目標や生き方に寄り添うことが大切となるでしょう。
■スタートアップのレイター期とは
レイター期は、スタートアップ企業にとっての安定期ともいえる時期です。売上が安定し、利益を継続的に上げられるようになるフェーズで、商品やサービスについても世間での認知度が上がっていることが多いでしょう。
このフェーズは手に入れた収益を元に、さらなる成長を求めて事業の拡大にチャレンジしやすい時期でもあるとされています。アーリー期から成長させてきた事業の他に、新規事業の展開を考える企業も増えるでしょう。
レイター期になると、企業は一定の資金力を持つようになる上、投資家や金融機関からの信用を得られるようになる傾向にあります。知名度も上がり、街中で企業名を見かけることが増えるケースもあるでしょう。シード期やアーリー期に比べて投資や融資を受けやすくなるため、事業拡大のための資金には困らなくなることが多いと考えられます。
レイター期の企業の従業員規模は、30人を超えることもあるようです。ミドル期に比べて人数が増え、人材管理がますます重要となるでしょう。
●レイター期の課題・失敗例
レイター期は、さらなる事業拡大を目指す企業ならではの問題が発生することが多いといわれます。とりわけ次のフェーズに向けた課題を抱えたり、資金面で失敗したりするケースが目立つでしょう。失敗の一例として、改革に賛同できない社員が辞職するなど、事業の成長のための取り組みが人材流出につながる可能性が考えられます。
■スタートアップのEXITとは
スタートアップにおけるEXITとは、IPOもしくはM&Aを指すことがほとんどです。
そもそもEXITは「出口戦略」と訳されるものであり、成長企業が次の段階へ進み、もはやスタートアップではなくなる時期として、どのような形を取るかが問われるでしょう。
EXITに進むということは、シード期、アーリー期とスタートアップ企業を応援してきた出資者に対し、利益を得てもらうことともいえます。そもそもスタートアップの出資者は、EXITで「どのように利益を得られるか」という戦略があるからこそ、大きな利益が得られない早期の段階からスタートアップ企業に投資をしていることが多いです。
投資家の出資からEXITまで、一般的には3〜5年が掛かります。スタートアップ企業は事業に投資してもらうため、シード期の段階からEXITを視野に入れておく必要があるでしょう。
では、IPOやM&Aのメリットやデメリットを見てみましょう。
●IPO
IPOとは新規株式公開を指すのが一般的です。株式市場への上場も行われるため、新規上場株式、あるいは、新規公開株、と呼ばれることもあるようです。上場により、一般の投資家との間で株式の売買ができるようになります。
多くの場合投資家は、スタートアップ企業への投資によって得た株式を上場後に売却できます。投資家にとっての利益は、原則ここで売却した際の利益と、投資のために過去に使った資金との差額です。上場後に株価が値上がりすれば、投資家にとって大きな利益を得るチャンスとなるでしょう。
したがって、スタートアップ企業がシード期に投資家からの資金を得ようと考える場合、EXIT戦略としてIPOを設定しておくのは有効といえます。
●M&A
M&Aは「合併・買収(Mergers and Acquisition)」のことです。スタートアップとして事業を成長させ、将来的にはM&Aで事業を売却することで、利益を得る形が多いです。
スタートアップ企業のM&Aでは、大企業や有名企業が有望な事業の株式を買収するケースが多いようです。知名度の高い企業に買収されることで、スタートアップ企業自体の知名度や注目度もぐんと上昇するでしょう。
M&Aの具体的な方法にはいくつかの種類がありますが、スタートアップ企業のEXIT戦略という観点では投資家に利益を得てもらう必要があるため、株式譲渡の手法が採用されることが多いでしょう。なお、M&Aの場合、スタートアップ企業の投資家は 売却先の企業にスタートアップ企業の株式を買い取ってもらうことで利益を上げるのが一般的です。
■スタートアップの資金調達方法とは
スタートアップ企業が資金調達を行うには、主に以下のような方法が考えられます。
●自己資本
自己資本とは、自分が持っている資金で事業に必要な経費を賄う方法を指すことが多いです。
他者から投資を受けないため、他者に利益を還元する必要がないのは自己資本のメリットといえます。一方、自己資本だけで全ての費用を賄うには経済力が不可欠となる点がデメリットといえるでしょう。
自己資本で資金調達を賄えるスタートアップのフェーズは、それほど資金を必要としないシード期の初期のみ、という考え方もあります。
●日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫は、資金調達が難しいけれど将来的に拡大が期待される中小企業や小規模事業者などに対して、有利な条件で融資を行っている政策金融機関として位置づけられています。
日本政策金融公庫からの融資は、その他民間の金融機関からの融資に比べて低金利で利用できることが特徴といえます。返済期間も比較的長く取られており、これから資金力をつけたいスタートアップ企業にとってはうれしい条件となるでしょう。ただし、審査に落ちると6ヵ月は再審査を受けられない点には注意が必要です。
ビジネスモデルが確立し、利益拡大を狙うアーリー期やミドル期のスタートアップ企業なら、日本政策金融公庫からの融資を利用しやすいでしょう。
●銀行からの融資
「融資は銀行から受けるもの」と考える方も多いでしょう。銀行からの融資は、審査で承認されれば大きな金額が借りられ、事業の大幅拡大や根本的なテコ入れができるというメリットがあると考えられます。ビジネスの成長段階において、必要な資金を調達するには最適といえるでしょう。
ただし、銀行からの融資を受けるためには企業に実績や信用が必要といえます。アーリー期はもちろん、ある程度収益性が見込めるようになってきたシード期であっても、銀行での融資を申し込む段階には至らず、ハードルが高いことがデメリットとなり得ます。
銀行からの融資は、ミドル期、あるいはレイター期に該当するスタートアップ企業に適した方法となるでしょう。この時期のスタートアップ企業は、大きな金額を必要とすることが多く、銀行からの融資も必要になるフェーズといえます。
●補助金・助成金
補助金や助成金は、自社が該当するものがあれば積極的に活用するとよいでしょう。スタートアップ企業の立ち上げを応援するための補助金・助成金は、国や自治体などさまざまなところで募集されているようです。しっかりした事業計画書などの提出が必要となるケースが多いですが、得た補助金は返済不要なものも多く、デメリットはゼロといえます。
補助金や助成金は、シード期、アーリー期のスタートアップ企業に向いていますが、その他のフェーズであっても機会があれば申し込むとよいでしょう。
●投資家による出資を受ける
スタートアップ企業にとって、投資家からの出資は事業を支える大きな柱となるはずです。特に、スタートアップ企業を応援して投資を行う投資家を「エンジェル投資家」と呼びますが、シード期、アーリー期の資金調達はエンジェル投資家からの投資に頼ることが大きい傾向にあります。
エンジェル投資家の中には、自分自身がスタートアップ企業を興した経験のある起業家も多くいるようです。エンジェル投資家との関係を築く中で、事業の立ち上げや進め方についてアドバイスをもらえるチャンスも期待できます。
エンジェル投資家からの投資は融資とは異なり、いわば返済義務のない資金にあたります。ただし、投資家にとっては将来的な利益を見込んだ出資であり、場合によって経営関与したがる可能性もある点は、考慮しておきましょう。
●ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタルとは、出資者を募って投資を行っている投資ファンドを指すのが一般的です。投資先はベンチャー企業やスタートアップ企業が多く、まとまった金額を投資してもらいたい場合に適した資金調達方法といえます。ベンチャーキャピタルの利用に適しているのは、ミドル期、レイター期のスタートアップ企業となるでしょう。
ベンチャーキャピタルは、将来的なIPOなどの際に株式を売却し、得た利益を投資家へ還元することを目的とした立ち位置にいます。したがって、ベンチャーキャピタルは投資先の企業をEXITのフェーズに至るまでしっかりとサポートする役割をも担っているといえます。スタートアップ企業に利益を上げさせるためには、ときにはベンチャーキャピタルが経営に乗り出すこともあるため、状況によっては経営者が自由に経営できなくなる可能性もある点がデメリットといえます。
●クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通して投資家から少額ずつの資金提供を受ける方法です。募る投資額はスタートアップ企業側が決定できますが、クラウドファンディングでは1投資家あたり数千円からといった少額の投資になる傾向にあります、投資する側も専門の投資家というよりは、スタートアップ企業の事業内容に興味をもった個人が多く見られるようです。
クラウドファンディングは、シード期に適した資金調達方法といえるでしょう。シード期にはスタートアップ企業の知名度が低く、クラウドファンディングを利用することによって知名度を上げる効果も見込めます。またクラウドファンディングの反応を見ながら、商品やサービスにどの程度の需要があるかを見極められるのもメリットとなるしょう。
■まとめ
スタートアップ企業には5段階のフェーズがあり、資金調達から企業規模まで、それぞれのフェーズにあった対応が必要となるのが一般的です。とりわけシード期からアーリー期には、資金調達を行うとともにEXITまでの事業の流れを描くことが重要となるでしょう。
企業規模が小さいうちは、大きな資金が集まらないため、あまり資金の掛からない小規模オフィスで営業するのが効率的といえます。必要なスペースだけを使用できるサービスオフィス、そのなかでも野村不動産が手掛けるH¹Oは、会議室や受付サービスなどが充実しており、スタートアップ企業に最適な環境を備えています。スタートアップ企業の立ち上げ、小規模オフィスの利用をご検討の際は、ぜひお気軽にH¹Oへお問い合わせください。