2月25日、日本経済新聞主催のイベント&セミナー「中規模オフィスビル戦略・最前線」が開催され(於・日経カンファレンスルーム)、野村不動産の黒川洋・都市開発事業本部長が登壇。「PMO・H¹O事業からみる野村不動産の中規模オフィス戦略」というタイトルで講演を行いました。会場には、金融、REIT、不動産関連企業勤務者、中小ビルオーナーなど約180名が参加、黒川氏の話に熱心に聞き入っていました。

現在の日本は、少子高齢化に伴う労働人口の不足、働くスタイルの多様化、地球環境問題など、様々な課題に直面しています。更なる持続的な成長に向け、オフィスに対するニーズも多様化する中、バブル期に大量供給された中規模オフィスビルの高齢化が大きなネックになっています。

今回のイベント登壇は、成長の好循環を生む中規模オフィスビルの再生や、新しいスタイルのオフィスビルをどう展開していくかといった、イベント参加者をはじめ、不動産業界全体が抱える課題に対して、野村不動産が有する中規模オフィスビル戦略やノウハウなどの知見を広めていこうという趣旨の取り組みです。

講演では、野村不動産の中規模オフィス戦略を具体的に公開。不動産開発ノウハウを持たない不動産所有者や同業プレイヤーに対して、PMO(プレミアム ミッドサイズ オフィス)、H¹O(エイチワンオー)という、近年ニーズが高まっている少数精鋭企業向けの中・小規模オフィスビルの開発・運営ノウハウを開示しました。

中規模オフィスへのニーズの変化を指摘

PMOの実績を数値面からみていくと、2008年開業から現時点までで、都心五区を中心に37棟を供給、累計テナント数は300社を超え、テナントストックは約3300社に上る。延貸床面積は約36,000坪、平均稼働率が99・3%と高く、一般的な中規模オフィスよりも5.62%高い。直近の竣工物件も高賃料で満床になっているとのこと。

黒川氏はPMOが高稼働・高賃料を実現している理由として、少数精鋭企業群のオフィスニーズが量的にも質的にも変化をしている点を挙げました。

「従来の少数精鋭企業像は、弁護士や会計士などのライセンサーが代表格でしたが、グローバル化の進展で外資系企業の日本拠点が増え、また、イノベーションニーズの増加で大企業の新規プロジェクト拠点とするニーズも増えました。顕著なのが、VCやCVCなど資金調達構造の多様化に伴い、“キャッシュリッチ”になったベンチャー企業の増加。こうした少数精鋭企業像の量的変化に伴い、オフィスに求める質も変化してきました。

近年の少数精鋭企業がオフィスに求めるものは、必要人数分のデスクを配置して作業スペースを確保するという基本機能だけでなく、社員のモチベーションや生産性向上にも寄与する要素、優秀な人材の採用に役立つ要素や企業ブランド力を向上させる要素等の付加価値を求める傾向が強いです。このようなユーザーは、オフィスを“コスト”ではなく、企業成長ための“投資”と考える価値観を持っています。特にベンチャー企業では知的財産の流出は命取りになりかねないので、情報セキュリティを重視するようになったという側面もあります」と、黒川本部長は指摘します。

U-10企業の、個のパフォーマンスを最大化する「H¹O」

こうしたニーズの変化に対応して、野村不動産は大規模オフィス並みのグレードとスペックの高さを持つPMO(社員30人前後の少数精鋭企業を対象)に加えて、昨年11月に、U-10企業=10人以下の超少数精鋭企業をターゲットにした「H¹O 日本橋室町」をローンチ。ニーズを徹底分析して生まれたクオリティ・スモール・オフィスの特徴を、次のように説明しました。

「H¹Oは、入居者様のABWを支援することを目的に設計されています。ABWとはActivity Based Workingの略で、働く個人のパフォーマンスを最大限に発揮させ、生産性を高めるため、仕事内容に合せて最適な環境を自由に選択できるオフィス形態のこと。単純フリーアドレスではなく、専有の個室空間がありながら、入居者専用の共用ラウンジもあり、その時の気分や目的によって、働き方を自由に選択できるレイアウトになっています」

「H¹O 日本橋室町」共用ラウンジ

「H¹O」では、業界初の3D顔認証システムを採用した強固な多段階キーレスセキュリティ設計や、有人レセプションサービス、入居者専用の共有ラウンジやヘルシーフードの提供など、小面積のオフィスでは実現されていなかった機能や設備、サービスを導入。2020年3月6日に開業した「H¹O 西新宿」では、近年注目されている「バイオフィリックデザイン」の思想のもと、緑や光、水といった自然の要素を取り入れた空間デザインを導入していることなど、自分らしさや心地よさ、心身の健康や豊かな感性を高める要素を取り入れることで、超少数精鋭企業のビジネスを強力にサポートするオフィス環境を提供していることを紹介しました。

コワーキングスペースとの違いとは?

黒川氏はさらに、国内の中規模オフィスの現状についての分析結果を紹介。特に近年、不動産業者以外からの参入が増えているコワーキングスペースとの違いについて解説しました。

コワーキングスペースは、コミュニティ形成機能を重視してオープンな設計思想になっている分、不特定多数の人の出入りがあり、セキュアな性能は後順位になっていること。一方、小規模賃貸オフィスは、多重セキュリティ設計であり、働き方の自由度や快適性、心地よさを重視していること。他者との交流よりも本業に集中できる環境をオフィスに求める層は一定数存在し、それがPMOとH¹Oの需要に繋がっていること。

「私たちが実現したいのは、オフィスから”規模の境界線”をなくすことです。大きな面積を借りるような大企業でないと上質なオフィスに入れない、というオフィス業界の常識を覆し、会社の規模にかかわらず、本当に力のある企業様に上質なオフィスを提供し、個人のパフォーマンスや生産性の向上に貢献したい。その志を持ち、スピード感を持ってPMOとH¹Oを展開してきたのです」

またテナントサービスとして、“コトづくり”にも力を入れ、テナント企業の合同新人研修や、田植え・稲刈りイベント、ランニングイベントなどを合同で開催していることも紹介。1社のみで実施しようとしても実現が難しい、少数精鋭企業特有の課題に耳を傾け、積極的に応えていることも明かしました。

スピード供給を実現するため共同事業にも取り組む

中規模オフィスのスピード供給を実現するため、野村不動産では単独開発にこだわらず、共同事業にも積極的に取り組んできたと、黒川氏は説明します。

PMOは12年間で37棟を供給し、供給予定を含めると50棟に及び、そのうち5棟が共同事業。老朽化した不動産を所有しているが開発ノウハウがない事業主に対して、野村不動産はノウハウをオープンにして課題解決を図り、共同事業者からは満足のゆく賃料で満床稼動になっているため、喜びの声を頂いている―と。

また、野村不動産ならではの事業戦略として、開発物件を系列の不動産投資信託(REIT)に売却して資本をリサイクルし、新規開発に再投資することで量的対応を迅速に行っていることも紹介。売却後も運営受託することで、高付加価値なサービスの維持・向上を果たしており、「当社の中規模オフィスは、物件の流動性とバリューが高いのが特徴で、不動産オーナー様にとって、万が一のとき売りやすい物件を所有しているのは、資産形成の上で非常に大きなポイントになります」と、黒川本部長は強みを語ります。

今後はGreen Buildingの取り組みへの意識が重要になる

さらに今後のオフィスづくりについては、建物の評価軸として、経済性や収益性だけではなく、環境や社会に対して最大限に配慮して設計される、グリーンビルディングの指標が重要になると指摘。

PMOは、日本政策投資銀行が認証する「DBJ Green Building認証」を全物件で取得しており、今年度から始まった、利用者の健康や快適性の維持・増進を支援する建物の性能、取組みを評価する「CASBEEウェルネス認証」では、2020年5月に開業予定の「H¹O 日本橋小舟町」を含む4物件で、大規模ビルと同等のAランクの評価を取得したことを報告しました。

最後に、「お客様のニーズに応えるため、良質な中規模オフィス作りに取り組む皆様にとって、少しでもヒントになれば幸いです。一緒に頑張っていきましょう。」と締めくくり、来場者からの拍手で講演を終えました。

スタートアップをはじめ、増加傾向にある少数精鋭企業が求めるオフィスが不足している、という業界、マーケットの課題に、PMOやH¹Oの事業を通して向き合う野村不動産。高齢化した中規模ビルを抱えるビルオーナーや不動産関係者に、これまで培ってきたノウハウや知見を広めながら、次世代のオフィスのあるべき姿を問い続けています。

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