「U-10」企業をはじめ、新規プロジェクト拠点や分散拠点としての活用も

日本では、従業員数10人未満の企業が全企業の8割を占めており、スタートアップをはじめとする少数精鋭企業の成長が日本の経済発展のカギを握ると言われている。野村不動産では、こうした企業を「U-10企業」として位置づけ、少人数のチームや組織をターゲットとしたサービス付き小規模オフィス「H¹O(エイチ・ワン・オー:Human First Office)」をローンチ。2019年11月に第1号物件となる「「H¹O 日本橋室町」をオープンした。

野村不動産がH¹O事業を開始した背景について、同社の都市開発事業本部 ビルディング事業一部で事業企画を担う佐藤夏美氏は、「日本では、U-10企業が全体の中で多くを占めるにもかかわらず、彼らのニーズを満たすオフィスが少ないという現状がありました。H¹Oでは、少数精鋭の企業で働く社員一人一人が、快適で心地よく、安心して自らのパフォーマンスを高めることができる環境を提供することを目指しています」と説明する。

H¹Oは、実際にどのような機能やサービスを提供しているのか。佐藤氏は、主な特徴として次の4つを挙げる。1つ目は、セキュリティやプライバシーに配慮した「専有の個室空間」を用意していること。2つ目は、受付にコンシェルジェを2名配置し、来客取次や不在時の配送物の受け取りなどの業務を担う「有人レセプション」機能を提供していること。3つ目は、入居企業のABW(Activity Based Working)を促進する入居者専用の「共有ラウンジ」を完備していること。4つ目は、オフィスコンビニの設置やヘルシーフードの提供など、入居者の心身の健康や心地よさ、快適性に配慮した「Well-beingな環境」を提供していることだ。

最先端の技術を活用した設備やサービスを提供していることも、今までの小規模賃貸オフィスにはない、H¹Oの大きな特徴だ。例えば、3D顔認証を活用した最大5段階のキーレスセキュリティを利用できるほか、室内のCO2濃度が高くなると自動的に換気をしてくれる機能や、スマートフォンを使って照明・空調を遠隔操作したり、共有ラウンジやトイレの空き状況を確認したりできる機能も提供している。

2019年11月から第1号物件への入居が始まったH¹Oだが、どのような企業が入居を決めたのだろうか。佐藤氏によると、スタートアップをはじめとするU-10企業だけでなく、最先端の環境で新しい挑戦をする大企業の新規プロジェクトチームや、働き方改革の一環でサテライトオフィスとして利用したいという引き合いも予想以上に多く、多様なニーズの受け皿になっているという。

最大5段階のキーレスセキュリティや専有の個室空間が決め手に

実際に入居した企業は、H¹Oをどう活用し、どのように評価しているのだろうか。2020年1月に「H¹O日本橋室町」に入居したユーシーテクノロジは、自社のクライアントが多く集まる都心部での活動を強化するための拠点として、H¹Oを選択した。同社が入居した個室は最小の2名部屋で、基本的に1名が常駐している。

同社は、組み込みシステムから、その上で動作するアプリケーション、クラウド・ソフトウェアまでを全方位で手掛けるシステム開発会社で、H¹Oのクラウドベースのスマートビル管理システムの開発も担当している。社員数30~40名規模の企業であり、東京都品川区西五反田に本社、神奈川県横須賀市にR&Dセンターを持つ。

都心に新たな拠点を構えた動機について、ユーシーテクノロジの代表取締役 諸隈立志氏は、「クライアントが都心部に多く、1日に複数のクライアントを訪問する際に、都心エリアに拠点があれば、本社やR&Dセンターへ帰る必要がなく、仕事を効率的に進めることができると考えたのが、入居のきっかけです」と語る。

諸隈氏によると、オフィスを選定するにあたっては、H¹Oのようなサービスオフィスだけでなく、コワーキングスペースも検討したという。コワーキングスペースの特徴は、コミュニティ形成機能を重視してオープンな設計思想になっており、基本的に働く場はオープンスペースだ。不特定多数の人の出入りがあり、セキュアな性能は後順位になっていることが多い。同社がH¹Oを選定した決め手は、ビルの入り口から専有の個室空間まで、3D顔認証による最大5段階のキーレスセキュリティ設計があること。写真などによる偽造は不可能でありながら、従来のカードキーと同等程度の認証スピードでパスできる、ストレスフリーな点にも満足しているという。もちろん、希望に合わせてカードタイプとの併用も可能だ。さらに、快適で安心できる専有の個室空間を提供していることも後押しした。情報資産や知的財産を扱う企業にとって、これは必須ともいえる環境ではないだろうか。

きめ細やかな配慮に、働く「場」の重要性を実感

企業が新たに拠点を持とうとする際に問題になるのが、イニシャルコストとランニングコストである。都心に拠点を構えようとする際、家具備品の調達やインフラの整備など、かなりの初期投資が必要だ。そしてそれを維持し、運用していくことも簡単ではない。設立から間もないアーリーステージのスタートアップや、従業員が少ない少数精鋭企業であれば、社長自身がその役割を担うことも少なくないだろう。

諸隈氏は、こうした点についても、H¹Oを次のように高く評価している。

「企業が新たに拠点を自前で持とうとすると、社員の席だけでなく、会議や応接のスペース、複合機やプリンターなど、様々な備品を揃える必要があります。また、来客応接や荷物受け取りなど体制の整備も必要となり、人員もそれぞれ配置しなければなりません。こうなると、コストがかかるだけでなく、本業に集中して打ち込むことができず、生産性が低下していくという状況に陥ってしまいます。しかし、H¹Oは、有人の受付を設置していたり、複合機などの備品はすべて整備されていたりと、ノートPC1台持っていけばすぐにでも働くことができる環境が整っている。これは、雑務に使っていた時間を、本来やりたいことに費やすことができるということです。個室が個別空調になっていることや、スマートフォンを使って照明や空調を遠隔操作できることなど、一見すると細かい部分も、自前では絶対にできないので嬉しい配慮ですね。絶好のロケーションと利便性も考慮すれば、十分にペイできていると考えています」(諸隈氏)

3月初めに開業した「H¹O 西新宿」では、ウイルス感染を未然に防ぐ空気感染対策システムの導入など、新たな取り組みも始めている。

「働く一人ひとりの目線に立って、必要な部分は改善していきたいと思っています。入居企業のユーザーの方の声に耳を傾けながら、それぞれのニーズには可能な限り対応していく方針です」(佐藤氏)

また、契約に関しても、一般的なオフィスは2年契約がほとんどだが、H¹Oの場合は、最短3ヶ月単位で契約できるため、利用者は企業の急成長やプロジェクトの変更にも柔軟に対応できる。「H¹Oのように、コスト効果や利便性の高い物件が提供されるようになれば、小規模な企業でも拠点の分散が容易になり、働き方改革をより進めることが可能になるはずです」と、諸隈氏は強調する。

諸隈氏が、もうひとつ評価しているのが、個室空間にしっかりとしたプライベートスペースがありながら、入居企業専用の共有ラウンジもあるという、社員のABW(Activity Based Working)を実現するための仕組みである。「社員の顔を見ながらコミュニケーションが取れる、快適で安心できる個室空間があって、かつ、気分を変えたい時や作業に没頭したい時に利用できるラウンジスペースがあるのは嬉しい」(諸隈氏)。佐藤氏によると、このABWの考え方は、オランダから始まったワークスタイルで、個人のパフォーマンス向上や、心理的ストレス軽減に寄与するという研究結果も報告されているという。

H¹Oは、2019年11月に第1号物件の日本橋室町がオープンして以来、2020年3月には西新宿、5月には日本橋小舟町がオープンする予定だ。さらに、渋谷、虎ノ門、神田など、2023 年度末までに 15 拠点の開業を急ピッチで進めていく計画だという。佐藤氏は、「今後も、入居者の皆さまが心地よく仕事ができ、自らのパフォーマンスを最大化できるような空間づくりを追求していきます」と、力を込めて語った。

Cnet

Cnet 2020.03.30 配信記事より転載

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