コクヨ株式会社 ワークスタイル研究所 所長 「世界のオフィストレンドは『人間中心へ』〜コクヨのチーフオフィスリサーチャーに訊く!」


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“働くヒトが幸せに生きる”ためのWell-Beingを大切に考える、野村不動産の新しいサービスオフィスブランド「H¹O」。2019年9月、多彩なゲストと一緒に、働き方の未来を考えるトークセッションが、日本橋室町野村ビル(YUITO)で開催されました。

今回紹介するのは、9月3日に行われたTalk Session1と2。モデレーターは、新しい働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」のオーガナイザーで、『自己紹介2.0』『これからの僕らの働き方』などの著書のある横石崇氏です。

「ミッション」を明確にしなければ、ブランドはつくれない

Talk Session1のテーマは、「人を動かす『ミッション』の本質とは何か?〜元スターバックスCEOが伝えたい、信頼されるリーダーへの道〜」。

ゲストは、元スターバックスコーヒージャパンCEO、リーダシップコンサルティング代表の岩田松雄氏です。

岩田氏は、日産自動車、外資系コンサル、日本コカ・コーラ役員を経て、(株)アトラス、「THE BODY SHOP」、スターバックスコーヒージャパンのCEOに就任、現職に至ります。いずれの企業でも改革を実行し、業績を向上させた手腕の持ち主です。

岩田氏は、スタートアップ企業が成長する過程において、その企業の「ミッション」を明確にすることが大切だと訴えます。「人を雇い、ある程度組織の規模が大きくなって来ると、方向性の違いが出てきて、例えば社長と副社長が喧嘩分かれしてしまうケースも経験しました。何のために事業をするのか、企業のミッションを明文化し伝えることが大事で、採用においても、そのミッションに共感する人材を採用しなければ、後で苦労することになります」

岩田氏はまた、ユヴァル・ノア・ハラリの著作『サピエンス全史』を例に出して語ります。人類の歴史には、言葉を獲得した“認識革命”と、定住を実現した“農業革命”があり、狩猟民族から農耕民族に移行して集団が大きくなったとき、必要とされたのが“集団が共通に信じられる何か”だったと言います。「それが神話であり、現代のベンチャー企業で言えば、皆が共通して信じられる企業の理念、ミッションなのです」

さらに岩田氏は、マーケティングの権威であるフィリップ・コトラーの著作『マーケティング4.0』 についても言及します。「マーケティング4.0において、デジタル・マーケティングは顧客からの信頼や推奨を勝ち取ることが最終目標となり、それを得るためには、誠実にコンテンツを磨くことが大切になります。その顧客との約束が、ブランド=信用になるのです。ミッションを愚直に追求した結果、お客様に伝わりブランドになっていくのです。つまりミッションとブランドは表裏の関係だ」と主張します。

たとえば、Googleのミッションは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」であり、スターバックスのミッションは「一杯のおいしいコーヒーを通じて、お客様にやすらぎと活力を提供する」というもの。これらはミッションとブランドが合致している例です。

「現代はインターネットが発達し、噓がつけない時代。お客様に信用され、ブランドを確立するためには、自分たちは何のために事業を行っているのか、そのミッションを明確にして、ミッションを通じて人を動かし、商品やサービスを追求していく必要があるのです」

AIは“新しい時代の電力”、人間の役割は“課題をつくること”になる

Talk Session2に登場したのは、ITジャーナリスト・コンサルタントの林信行氏。テーマは「すべての価値観が変わるAI時代〜新しい働き方を考える〜」です。

林氏は、世界を変えるテクノロジーやデザインの最前線を、30年近くにわたって取材。ソーシャルメディアやニュース、コンサルティング活動を通して自ら情報発信する傍ら、Apple社が展開するモバイル端末向けOSである「iOS」を通じた学びの場を提供するiOSコンソーシアムのアドバイザーや、英ダイソン社が未来のデザインエンジニア育成のために設立した、ダイソン財団の理事なども務めています。

林氏は、2007年にスティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したことで、世界の風景は変わってしまった、と語ります。「iPhoneは、人類史上一番速いスピードで普及した電気製品で、現在も年間2.2億台のペースで販売され、あらゆる業界に変革をもたらし、世界数億人の習慣を同時多発的に変えてしまった。これから起こる変化は、そのスマホの中で、AIをもとにしたアプリやサービスが動き始めること」と林氏は予測しています。

すでにAIはいろいろな場面で活用されている、と林氏は指摘します。「たとえばGoogleで検索するだけでも、検索エンジンの裏側ではAIが働いています。さらに、カメラで撮影した物体の名前を他の国の言葉で教えてくれる語学学習のアプリや、バスケットボールのシュートの軌道を予測してくれるアプリ、手術で流出した血液の量を計るアプリなど、“人間の勘をデータ化”してくれるアプリが次々に登場しています」と林氏。

AI は、機械学習による認識能力で人間の能力を凌駕しつつありますが、表現力や思考能力でも人間を上回り始めています。さらには、偉大な画家と同じような絵画を描き、本物にしか見えないフェイク動画をつくります。囲碁のチャンピオンもAIに敗れ、職人たちの技をロボットに継承させるプロジェクトをも進んでいます。「スタンフォード大学のAIの権威アンドリュー・エンは、“AIは新しい時代の電力だ”と言っています」

ではその新しい時代の中で、人間の役割とは何になるのでしょうか? 「AIが課題をどんどん解決してくれるので、人間の役割は“課題をつくること”になります。これからは、新しい価値を探求する“マルコ・ポーロ型”の人間、あるいは新しい価値を定義する“千利休型”の人間の存在が、重要になります。そこで問われるのは、生の人間力。AI時代だからこそ、人間的な社会とは何か? を考えながら仕事に取り組む必要あると思います」

9月3日のトークセッション、両者のゲストの話で共通していたのは、ネット社会、AI時代であるからこそ、人間力を活かした取り組みが大切だ、というもの。働くヒトが幸せに生きるにはどうすれば良いのか、そのヒントが至る所に散りばめられた、非常に有意義な内容でした。

野村不動産の「H¹O」では、3Dの顔認証システムを活用したキーレスの多重セキュリティ設計や、IoT技術を使ったオフィス内の混雑状況の見える化など、最新テクノロジーを活用した設備を導入しています。ただ、大切なのはデジタルテクノロジーを使うことではなく、そこで働く個人のパフォーマンスを最大化することであり、それによって働くヒトが幸せに生きることです。

次回は、9月9日に行われたTalk Session3と4の内容を紹介します。

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