企業の経営層が特に気を配るのが、従業員の業務パフォーマンス。そのため、従業員のメンタルヘルスを整えることが必要です。雇用条件や社会保証の拡充、最適な組織マネジメントなど、さまざまな施策を挙げられますが、 今 最も行わなくてはならないことが昨今流行している感染症への対策です。そこで、今回はオフィス環境の中でも、目に見えないけれどとても重要な空調について解説していきます。


目次

1 空調と従業員のパフォーマンスにはやはり相関関係があった


2 快適なオフィスの空気環境とは

3 快適な環境作りに欠かせないオフィス空調の種類

状況に応じて細やかな調整ができる「個別空調」
コラム 個別空調システム×IoT。テクノロジーを活用したオフィス環境作りがトレンド
全館を一元管理する「セントラル空調」

4 ニューノーマルな時代に合わせ、オフィスの空気環境を保つ

部屋の空気の基準値を維持するための換気方法
同じ部屋でも場所によって温度にムラがある
湿度を調整して不快感を取り除き、ウイルスを不活性化

5 オフィス空調用語の振り返り

6 オフィス空調を整えることが、従業員のパフォーマンス向上につながる


<目次>

成人が一日に吸う呼吸量は約20kg以上にも!

私たちは1回の呼吸でペットボトル1本分、約0.5ℓ の空気を吸っています。体重50kgの人の一日の呼吸回数は約2万8000回ほどですから、その量は1万4000ℓ 。重さにすると約20kgにもなります。

この数字を前にすると、少しでもクリーンで新鮮な空気を吸いたくなりますよね。特に 一日のおよそ3分の1を過ごすオフィスでは、快適な環境を保つために、空調設備の充実を考えたいものです。

1 空調と従業員のパフォーマンスにはやはり相関関係があった

「換気量と平均学習効率との関係」のグラフ。学習効果が換気量と相関があることが分かった。出典は、日本建築学会環境系論文集の「若年層(16~22歳)を対象とした温熱・空気環境の質が学習効率に及ぼす影響の検討」(後藤伴延、伊藤一秀)による、若年層について教室環境と学習効率の関係について調査結果

まず、換気が仕事や学習にどのような影響を与えるか、上の表にある「換気量と平均学習効率との関係」という調査報告書のグラフを見てみましょう。被験者に教室で学習してもらった際の、室内の気量と学習効果の相関性を表したものです。これを見ると、換気の量が知的生産性に影響を与えていることが分かります。

つまり、 クリーンな空気が多い環境ほど脳内作業は活発になり、より効果的なパフォーマンスを発揮できるということです。このように、空調施設の大切さは数字でも実証されているのです。では、オフィス環境の空調は何が最適で、どのような種類があるのか見ていきましょう。

2 快適なオフィスの空気環境とは

快適なオフィスの空気環境とは、どのようなものを基準に考えればよいのでしょうか。

「建築物衛生法」では、不特定多数が利用する延べ面積3000m2以上の建築物のオーナーは、「建築物環境衛生管理基準」の維持管理をしなければならないとしています。この衛生管理基準には空気環境も含まれており、そのために各フロアの空気中の成分を測定することが義務付けられています。

建築物環境衛生管理基準

測定項目は浮遊粉じん、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、湿度、気流、ホルムアルデヒドの量などです。各項目の基準値は上の表になりますが、この測定を年に6回実施しなければなりません。そのために定期的な空調設備のメンテナンスや更新が求められます。

その他の例についてもこちらの環境省のサイトでチェックしてみましょう。

次に、この空気環境を維持するための設備として、どのような空調機があるのか見ていきましょう。

2 快適な環境作りに欠かせないオフィス空調の種類

オフィスが導入する空調機によって快適さは大きく変わってきます

オフィスでかかる電気代のうち、およそ半分は空調代だといわれています。そのため、その 建物やフロア、あるいはレイアウトや業態に合わせて適切な空調設備を設置しなければ、ムダなコストの増加につながります。その空調設備には、大きく分けて「個別空調」と「セントラル空調」の2種類があります。

個別空調とセントラル空調のまとめ

上の表のように、 「個別空調」と「セントラル空調」には、それぞれ長所と短所があることが分かります。では、イメージをイラストで見ながら、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

状況に応じて細やかな調整ができる「個別空調」

部屋ごとに空調の調整ができるため、今では個別空調を取り入れるオフィスビルが一般的になっています

人によって体感する温度や湿度は違います。同じ部屋にいても、暑いと感じる人もいれば、寒くて上着が必要という人もいます。 個別空調は、フロアや部屋ごと、さらには各部屋のゾーン別にスイッチのオン・オフや温度調整ができる空調です。最近の新しいオフィスでは、個別空調が一般的。管理しやすい個別空調は、快適な職場環境を保つことができます。さらに無人の部屋やゾーンでは、空調をオフにすることができます。ただし、利用した分だけ電気代がかかるため毎月の料金は変動します。そのため管理者や責任者は、コスト管理へも気を配る必要があります。

コラム 個別空調システム×IoT。テクノロジーを活用したオフィス環境作りがトレンド

全貸室が24時間、個別に空調管理できる「 H¹O(エイチワンオー)」。最先端テクノロジーを活用することで、入居者にも環境にも優しいつくりになっています

テクノロジーの進化は、空調にも影響を及ぼしています。サービスオフィスを提供する野村不動産の「H¹O(エイチワンオー)」では、 全室で入居者が自由に室温などを設定できる24時間個別空調を採用。また、室内のCO2濃度に応じて自動的に換気量を変更するシステムや、 アプリを使って外部からスマホを通して空調を遠隔操作したりするなど、最先端のIoT技術を用いて空調システムを制御しています。また、一部物件では、空調は床下から行われる「床下空調システム」を採用しており、天井から風が直接体に吹きつけられて不快になったり、部屋の中で温度差ができたりすることがありません。


●H¹Oの空調システム

・個別空調

全室個別空調を採用しています。多くの人が共に働くオフィスで悩みの種となりやすい空調。暑さ・寒さで社員の集中が妨げられることがないよう、快適に過ごせる環境づくりのためのこだわりです。また、H¹Oでは水道光熱費が賃料に含まれているため、利用料金を気にせずお使いいただけます。

・IoT技術による遠隔操作

室内の空調や照明は、ブラウザやスマートフォンの専用アプリを使って遠隔操作が可能です。誰もが出勤した瞬間から快適に働けます。また、共用ラウンジやトイレの混雑状況も一目で分かるなど、ストレスフリーな利用を実現しています。一方で、ラウンジ等の共用スペースの空調においても、人感センサーと連動し、利用者不在時には設定温度を緩和することで、24時間快適に利用できるよう空調を制御しつつ、省エネも実現しています。

・CO2濃度感知による自動換気システム

室内のCO2濃度を常に測定し、基準を超える濃度に達すると自動的に換気量を増大させる等、室内のCO₂濃度に応じた換気量制御を自動で行います。

・床下空調

空調システムの設置自体も、入居者の事を考えた設計が、一部物件において取り入れられています。各フロアは二重床構造になっており、床下から冷暖気が吹き上がる床下空調システムを採用。対流効果で、室内のどこでも一定の温度を保てるようになっています。

中心にミーティングスペースを設置することで、従業員の回遊性が向上し、コミュニケーションの円滑化にもつながります

→「H¹O 日本橋小舟町」の空調についてこちらで詳しく説明しています

これらの最新のIoTシステムを使った 空調、さらに水道費・光熱費は、H¹Oでは家賃に含まれているため、初期費用やランニングコストを抑えて事業へ資金を回したいスタートアップなどの企業の強い味方となっているようです。こうした最新技術と利用者目線の設計やサービスにより、ビジネスの効率化や生産性向上を図ることができるでしょう。

全館を一元管理する「セントラル空調」

一元管理のため、熱源機器を1カ所にまとめることができます。また、近年は機器単体の性能向上とシステム制御による省エネ性の向上が図られた機器も開発されています

建物全体の空調をまとめて管理しているのが、セントラル空調です。一世代前のビルでは多く見られました。全館共通の空調であるため、セントラル空調の料金は建物共益費に含まれており、個別空調よりも低めになることがあります。ただし建物全体の利用時間が決められており、時間外の利用には別途料金が発生します。

また空調を一元管理できる反面、 フロアや部屋ごとに調整ができないため、自分に合わない室温や湿度でも我慢せざるを得ません。内勤の人は室内にずっといるため、夏でもカーディガンや上着が必需品という話を聞いたことはありませんか。そのようなときに部屋やフロアごとに室温などを調整できないというデメリットもあります。

4 ニューノーマルな時代に合わせ、オフィスの空気環境を保つ

新型コロナウイルス感染症から身を守るために、室内の換気が重要視されるようになりました。では実際に、効果的に換気したり、室内の温度のムラを解消したり、湿度を加減したりするには、どのように空調を調整すればよいのでしょうか。オフィスの空気環境をより快適な状態に保つためには、 窓の構造などを把握し、基本的な換気方法を知っておく必要があります。では、具体的な方法を見ていきましょう。

部屋の空気の基準値を維持するための換気方法

ウイルスの感染拡大を防ぐために避けるべきとされる「3つの密(密閉・密集・密接)」。その一つである「密閉」を解消するためにも、室内を定期的に換気することが推奨されています。しかし、オフィスの中には窓が自由に開閉できない所があったり、冬場にのべつまくなしに窓を開ければ寒さで仕事にならなかったりと、自然換気が難しい場合もあります。 そこで、窓を開ける自然換気と空調をうまく組み合わせて換気を行う方法を解説していきましょう。

1.窓の開閉が可能なオフィスの場合

低層階などのオフィスビルでは窓の開閉が可能なことが多いです

窓が開閉可能なオフィスでは、30分に1回以上、窓を全開にするのが望ましいといわれています。時間は数分くらい。その程度の間でしたら、冬場でも我慢できますね。窓を開ける際に気を付けることは、 窓を2カ所、できれば向かい合う窓を開けて、室内に空気の流れを作ることです。もし窓が1つしかない場合は、窓と一緒にドアを開けたり、換気扇や扇風機を利用したりして、室内に新しい空気が流れるようにしましょう。

2.窓の開閉ができないオフィスの場合

窓を通した換気ができなくても、ビル管理法で定められた換気を意識的に行うことが必要です

一方、窓の開閉ができない、あるいは窓がない部屋では、換気することができないのでしょうか。心配することはありません。ビル管理法(正式名称「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」)では、1人当たり毎時30m3の必要換気量が義務付けられており、その基準が守られていれば必要な換気は行われていることになります。 室内の人数を減らす、ドアを開ける、換気扇を利用するなどの工夫をすれば、さらに効果的な換気が期待できます。

同じ部屋でも場所によって温度にムラがある

一般社団法人環境情報科学センターによるオフィス熱環境の測定結果です。コピー機やプリンターなど常時稼働するOA機器周辺では温度が高めであることが分かります。そのため、周りに空調設備を配置するなどの工夫が必要になります

一般社団法人環境情報科学センター

オフィス熱環境の見える化と改善~節電中でも熱ストレスがない快適な労働環境づくり~

環境省が推奨する室温の目安は、夏は28度、冬は20度です。では、エアコンの設定温度を28度にすれば、 オフィス全体が同じ温度になるかといえば、残念ながらそうではありません。デスクワークをしている間、頭がボーっとするくらい室温が高いにもかかわらず、足元では寒く感じるといった経験はありませんか? コピーやプリンターなどの事務機器の周辺にはどうしても熱がたまりやすく、またパーテーションや什器の配置によっては、室内に暖かいエリアとそうでないエリアができてしまうこともあります。

では、こういった室温のムラは、どうやって解消すればよいのでしょうか。空調のプロによるコンサルティングを受けるなどの方法も考えられますが、ここでは自社で取り組める対策をご紹介します。

エアコンの風向きを小まめに調整して、室温のムラを解消

エアコンの羽やサーキュレーターを使用し、冷気と暖気を対流させることで、簡単にオフィス内の空気環境を簡単に調整することが可能です

室温のムラは、室内に空気が滞っていることで生じます。それを解決するためには、空気を循環させて温度を一定に保つこと。つまり「滞留」から「対流」させるということです。

簡単にできる一例としては、 エアコンの風向きをこまめに変えることをお勧めします。空気の吹き出し口を一方向に固定するのではなく、あちこちに変化させることで、空気の流れを促します。また サーキュレーターや扇風機などを利用して、空気を対流させるのも効果的です。

先述した「H¹O 日本橋小舟町」の例 のように、「H¹O」が採用している床下空調も、室内の温度のムラを解消するには有効な設備です。

湿度を調整して不快感を取り除き、ウイルスを不活性化

快適な湿度の一般的な目安は45〜60%といわれています。上の表は、アメリカ暖房冷凍空調学会の資料を基に編集したものです

快適なオフィス空間を維持するためには、 室温だけでなく湿度を調整することも重要です。一般的に快適と感じる湿度は前述のとおり。それよりも高ければ、ジメジメ、ベトベトして不快感が増しますし、逆に低ければ肌が乾燥したり、静電気が発生しやすくなったりします。それだけでなく、 高めの湿度はカビやダニの発生を促し、低い湿度はウイルスの動きを活発化させ、どちらも健康に良くない環境をつくり出してしまいます。それでは、オフィスで快適な湿度を保つためにはどうすればよいのでしょうか。

オフィスの湿度を快適に保つ方法とは

加湿と除湿をうまく取り入れて湿度を保ちましょう

湿度が高過ぎる、あるいは低過ぎる状態になるのは、室内で空気が滞留してよどんでいることが一番の原因です。それを解消するために大切なのは、まず換気すること。 定期的に窓を開けて空気を入れ換えることで、湿度を保つことができます。

窓が自由に開閉できないオフィスでは、サーキュレーターを使って空気が循環しやすくなるようにしましょう。また、 加湿器や除湿器をうまく利用するのもお勧めです。日本の四季、特に夏と冬には、快適な湿度を保たなくては快適に過ごすことができません。以下の方法を目安に、オフィスの湿度を調整してみましょう。


●湿度の調整方法

夏のオフィス

・エアコンの湿度を低めに設定
・エアコン、空気清浄機のドライ機能を利用
・湿度の目安は45%~55%

冬のオフィス

・加湿器を利用
・観葉植物を配置
・こまめに水分補給
・湿度の目安は50%

また、植物には、水分を吸収したり発散したりする作用があります。そのため、自然の力で室内の湿度調整を行ってくれます。

快適なオフィス環境作りのポイントについてこちらで詳しく説明しています。

→ 快適なオフィスの湿度の目安は? 保つ方法も紹介

5 オフィス空調用語の振り返り

では、今回キーワードとなった用語などを簡単に解説しましょう。経営者なら知っておくべき、ビジネス上でよく使われる言葉です。

IoT

「Internet of Things」の略。「モノのインターネット」といわれ、インターネットに接続されたモノが双方向にデータのやりとりを行うことで、遠隔での操作が可能になる

ビル管理法/建築物衛生法

「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」のこと。不特定多数が利用する建築物の環境衛生を確保するための法律

6 オフィス空調を整えることが、従業員のパフォーマンス向上につながる

空気は、人間が生存していくために欠かせません。 空気の質が人の行動にも影響を及ぼすことは、さまざまな科学的実験によって実証されています。またビジネスにおいても、 オフィスで質の高い空気を供給することが、働く人たちのパフォーマンスを高め、生産性を向上させることにつながるといわれています。昨今、快適で過ごしやすいオフィス環境が求められていますが、その第一歩は常にクリーンでフレッシュな空気を保つことだといっても過言ではないでしょう。

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