事業の拡大やオフィス環境の改善など、さまざまな理由で会社・事務所移転をすることがあります。自宅の引っ越しを経験したことがある方であればその大変さを想像できると思いますが、会社の移転というのは一般家庭の引っ越しと比べてもかなり大掛かりで、多くのタスクが発生します。中でも、会社・事務所移転に伴うさまざまな手続きは煩雑で、提出の期限が定められているものもあるため注意が必要です。



今回は、会社・事務所移転の際に必要な各種手続きと注意すべきポイントを解説いたします。会社・事務所移転を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

目次


●会社・事務所移転で必要な各種手続き


●ビルオーナーや管理会社、銀行、ネット回線、取引先へ連絡


●移転先で注意すべき4つのポイント


●オフィス移転に関するQ&A


●まとめ


<目次>

会社・事務所移転で必要な各種手続き

事業の拡大や社屋の新設などで会社を移転する場合、さまざまな事務処理や届出が必要になります。中には事前に書類の取り寄せが必要なものや、提出の期限が定められているものもありますので、漏れなく処理をしていくことが大切です。

では、実際に会社の移転で必要になる手続きにはどのようなものがあるのでしょうか。

移転で必要になる手続きの一覧

それぞれの手続きごとに詳しく見ていきましょう。

①転居届

転居届は郵便局に提出する書類です。手続きをすることによって、会社を移転してから1年は旧住所に届いてしまった郵便物を無料で新住所に転送してくれるサービスを受けることができます。

会社を移転する際には、取引先などにも移転の連絡をすると思いますが、万が一連絡が伝わっていない取引先があった場合でも、転送サービスが利用できれば安心です。手続きをしてから転送開始までには数日かかるため、会社の移転と同時に転送サービスを利用したい場合には、事前に届出をしておくようにしましょう。尚、転居届の手続きは郵便局の窓口だけでなく、インターネットからも申し込むことができます。

②移転登記

会社を移転した場合、移転前の管轄法務局に移転登記を提出することが義務付けられています。移転登記は本店の場合には「本店移転登記申請書」、支店の場合には「支店移転登記申請書」と種類が分かれていて、本店は移転後2週間以内に、支店は3週間以内を期限として手続きを行わなくてはいけません。尚、手続きの際には登記簿謄本、定款、印鑑証明書、株主総会議事録または取締役会議事録などが必要です。

③ 異動届出書

「異動届出書」は移転前の管轄税務署に提出する書類です。法人税の取り扱いに関係する重要な手続きですので、移転後速やかに手続きを行いましょう。手続きの際には添付書類として「移転手続完了後の登記簿謄本」が必要です。

④給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

異動届出書と同様に、こちらも税務署に提出する書類です。会社を移転してから1カ月以内に、「登記薄謄本」または「登記する事項にあっては、変更の事実を証明できる書類の写し」を添えて提出しましょう。

⑤健康保険・厚生年金保険適用事務所名称/所在地変更(訂正)届

これまでの年金事務所が管轄する地域外へ会社を移転する場合に必要な手続きです。移転から5日以内に事業主が「変更前の事業所の所在地を管轄する年金事務所」に届出をしなくてはいけません。届出は窓口以外にも、郵送、インターネット申請なども可能です。法人か個人か、移転の条件によっても添付書類が異なるため、事前に確認をしておきましょう。

⑥労働保険名称・所在地等変更届

会社名が変更になった場合や、移転によって住所が変更になった場合に必要な手続きです。移転で労働基準監督署の管轄が変更になる場合には、移転先の管轄労働基準監督署へ書類を提出します。ただし、移転によって都道府県が変更になる場合には必要な書類が異なるため注意が必要です。

⑦雇用保険事業主事業所各種変更届

「雇用保険事業主事業所各種変更届」は、雇用保険に関係する書類で、公共職業安定所に届出が必要です。提出期限は移転から10日以内で、「移転後の登記簿謄本写し」、「労働保険名称」、「所在地変更届」を添えて提出します。窓口に持参するか、インターネットからの申請も可能です。

⑧車庫証明

車庫証明は「自動車保管場所証明申請書」のことで、移転後も車両を保有するために必要な手続きになります。届出の期限は特にありませんが、この申請を行わなければ原則として車両を保有することはできませんので、移転後なるべく速やかに管轄の警察署へ提出しましょう。

⑨防火対象物使用開始届出書

オフィスビルの1室などを借りて新たに事務所を開く場合、使用を開始する7日前までに移転先の管轄消防署に届け出る必要があります。その届け出に必要な書類が「防火対象物使用開始届出書」です。内装工事を行わない場合でも提出する必要があります。

⑩防火対象物工事等計画届出書

オフィスビルに入居の際にパーテーション、床、壁などの内装工事を行う場合は、着工の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」を移転先の管轄消防署に提出する必要があります。届出書に加えて以下の添付が必要です。

・防火対象物の概要表
・案内図
・平面図
・詳細図
・立面図
・断面図
・展開図
・案内仕上表、建具表
・火器使用設備、火器使用器具の位置、構造等の状況を示した図

ただし、天井に達しないローパーテーション等の間仕切り壁の場合は届け出の必要はありません。

⑪ 防火・防災管理者選任(解任)届出書

消防法第8条に基づき、防火管理者を選任または解任した場合、「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を移転先の管轄消防署へ提出する必要があります。提出の際は、防火管理者の資格を有することを証明するもの(防火管理講習修了証の写し、経歴証明書の写しなど)を添付します。

⑫ 消防計画作成(変更)届出書

防火管理に係る消防計画の作成または変更を行った場合、「消防計画作成(変更)届出書」を移転先の管轄消防署へ提出する必要があります。提出の際は、事業所が作成した「防火管理に係る消防計画」等を添付します。

⑨~⑫は内装業者が代行してくれる場合が多いので、相談してみるとよいでしょう。

ビルオーナーや管理会社、銀行、ネット回線、取引先へ連絡

行政への申請手続きのほかにも、事前にやっておくべきことがあります。旧オフィスの解約手続きや銀行等への住所変更手続き、インターネットや電話回線の移転手続き、取引先への移転連絡です。

オフィスの解約手続き(原状回復工事の手配や敷金・保証金の償却)

「移転が決まったら」、オフィスの解約手続きを行います。オーナーやビルの管理会社には通常6カ月前までに退去する旨を伝えます。退去日が決ったら、その日までにオフィスの原状回復工事が終わるように手配します。居住用物件と異なり、オフィスの原状回復はテナント側が行う義務があります。

トラブルを避けるため、どこまでの範囲を原状回復させる必要があるか、契約時に決められているため、オーナー側に確認しましょう


「どこまでの範囲を原状回復させる必要があるかをオーナー側に確認することが必要です。契約時にどの範囲まで原状回復するか決められているはずなので、その内容によって範囲は異なります」。契約時にどの範囲まで原状回復するか決められているはずなので、その内容によって範囲は異なります。また、契約によっては原状回復を行う業者が指定される場合がありますが、指定がなければ自社で業者を手配します。

敷金・保証金は退去時に返還されるわけではなく、原状回復工事終了後、水道光熱費など経費の精算が終わった時点で「債務の精算」が行われます。オフィスビルの場合は「償却」という制度がある物件が存在します。償却(関西では「敷引き」)は、解約精算時に敷金・保証金から無条件に差し引かれます。また、原状回復費用を敷金・保証金から差し引いて返還される場合もありますので、敷金・保証金は全額返還されることはほとんどないと考えたほうがよいでしょう。

銀行・クレジットカードの住所変更手続き

会社を移転した際につい忘れてしまいがちなのが、銀行やクレジットカードに関する手続きです。法人銀行口座の登録住所を変更する場合には、通常は印鑑や通帳、印鑑証明書などが必要ですが、具体的な手続き方法は銀行によっても異なるため、事前に余裕をもって確認をしておくとよいでしょう。

また、法人名義のクレジットカードやETCなどを使っている場合には、そちらも住所変更手続きが必要です。手続きの際には決められた書類を取り寄せしなくてはいけないことも多いため、会社の移転が決まり次第できるだけ早く問合せをしておくことをおすすめします。

インターネットや電話回線の移転手続き

移転する前に、移転先のインターネット回線や電話回線の状況を確認する必要があります。現在のオフィスで使用しているインターネットや電話の契約会社にも移転する旨を伝えます。移転先でも引き続き同じ会社のサービスを利用する場合は移転手続きを、別の会社に切り替える場合は解約手続きを行います。

契約会社には、現在のオフィスにいつまで入居しているのか、継続する場合は移転先でいつから使用したいのかを伝えます。移転してすぐに使えないと業務に支障が出るので、日程をしっかり調整することが重要です。

取引先への連絡

取引先への連絡や挨拶も大事です。単に移転先を連絡するだけでなく、丁寧な挨拶も加えることで今後の取引継続につなげることができます。連絡漏れがあると失礼にあたるので、取引先をリストアップし、ほかに漏れがないか入念にチェックする必要があります。誤字・脱字は印象を悪くするので、発送前に推敲することが大事です。

移転先で注意すべき4つのポイント

本社オフィスが移転する場合、移転先が旧オフィスとまったく同じ環境ということは考えにくいでしょう。新オフィスが旧オフィスよりも機能や設備が落ちる場合、さまざまな問題が生じる可能性もあります。移転先で注意すべきポイントを確認します。

セキュリティ面が低下しないか

セキュリティ面が低下し、取引先や顧客のデータが流出すれば信用問題にかかわります。オフィスが変わっても、セキュリティは常に強固に保たなければなりません。インターネットやパソコンの接続環境については物件の内覧時に、不動産会社にしっかり確認する必要があります。

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コロナが収まったときに対応できるかどうか

新型コロナウイルスもいずれは収束するでしょう。そのときに新たな業務体制に対応できるかどうかも問題です。とくにリモートワークを縮小し、本社勤務中心に戻すと急に社員数が増え、新しいオフィスで収容しきれない恐れも出てきます。収容人数に関しては、小規模オフィスを併用するなどの方法もあるので、収束が近いと判断した時点で早めに新体制への計画を立てておくことが大事です。

社員のモチベーション低下

オフィス環境によっては社員のモチベーションが低下することも考えられます。冷暖房の設備が古い、インターネットの環境が悪い、トイレの数が少ないなど、社員が不便に感じ、快適に仕事ができないことは生産性の低下につながります。自社で改善できることもあれば、テナントビルの構造上改善が難しい部分もあるため、構造上の問題点は物件を内覧した時点でしっかりチェックしておくことが必要です。

メンタルヘルスを維持できるか

「心の健康」とも訳せるメンタルヘルスをケアするのもオフィスの重要な役割です。オフィスを移転する際は、ゆとりのあるオフィスレイアウトに設定し、リラックスできるスペースを確保するなど、社員のメンタルヘルスケアにつながるオフィス体制を築くことが求められます。

「社員が幸福だと、創造性も生産性もアップする」という研究結果があります。移転を機に個人のポテンシャルを十分に発揮できる職場環境にすることが、会社の発展につながる一番の近道といえるでしょう。

オフィス移転に関するQ&A

ここまでオフィス移転の手続き、移転の際の注意点について解説してきました。上記以外で気になる点をQ&A形式で確認していきましょう。

Q1 移転にはどのようなコストがかかるのでしょうか

通常のオフィス移転では、入居時に敷金・保証金6〜12ヶ月分、賃料1ヶ月分、新オフィスへの物品運搬費、内装工事費、ネットワーク・セキュリティー工事費、家具購入費などがかかります。H¹O(サービスオフィス)は、従来オフィスと比べ、初期コストを削減することが可能です。初期コストは、施設毎にビジネスに必要とされる機能(受付、共有ラウンジ、会議室等)を初期搭載しているため、従来オフィスと比べ、内装費やセキュリティ工事費を抑えることが出来ます。

Q2 移転を考えるのはどれくらい前からがベストでしょうか

現オフィスオーナーへの退去通知が6カ月前には必要ですので、移転の計画は1年前くらいから考える必要があります。前半の6カ月で移転について社内で検討し、通知後後半6カ月で具体的な移転準備を進めるのがベストです。いきなり移転の準備を始めることはできないので、おおまかに「考えるのに半年、準備するのに半年」と考えるのがオススメです。

Q3 オフィスレイアウトを考える際に役立つ無料ソフトはありますか

レイアウトを作成する無料ソフトはたくさん出ています。オフィスのイメージを掴みやすい3Dグラフィックを作成できるソフトに「Sweet Home 3D」があります(有料版もあり)。レイアウト図面に家具や什器を自由に配置でき、3Dに切り替えることでオフィス空間を視覚的に確認できます。ダウンロード版のほかにブラウザ上で使用できるオンライン版もあり便利です。

ただし、無料ソフトで作成したレイアウトは大まかなイメージを掴む程度に考えたほうがよいでしょう。実際の寸法とは異なる場合があるので、実際の寸法を測って確認することが必要です。

まとめ

会社・事務所移転に伴うさまざまな届出はいずれも大切な手続きです。また、移転先で考えられる問題点については、移転前に対応策を考えておくことが必要です。会社の移転が決まった場合には、あらかじめ上記でご紹介した内容をきちんと理解した上で、漏れのないように準備を進めていきましょう。

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