会社に所属しないで自由な働き方ができる個人事業主。多様な働き方がある今、独立して個人事業主になろうと考えている方もいるかもしれません。起業の際、個人事業主と法人のどちらを選ぶか迷っている方もいるでしょう。

本記事では個人事業主と法人・フリーランスとの違いや、個人事業主として独立するメリット・デメリット、個人事業主として開業するために必要な手続きをご紹介します。個人事業主として働くことに興味のある方は、最後まで読んで参考にしてみてください。


<目次>

■個人事業主とは

個人事業主とは、個人で事業を営む人のことです。企業・団体に属さない立場で、法人化せずに事業している人を総称して個人事業主と呼びます。

国税庁が個人事業の例として挙げているのは、小売業・卸売業・運送業・請負業・加工業・修繕業・清掃業・理容業などです。また弁護士や公認会計士、税理士などの士業も個人事業主としています(※)。

また、上記の業種だけではなく、フリーで活動するデザイナーやライター、プログラマーやイラストレーターなども、個人で事業を営む個人事業主に当たります。

個人事業主には、一人で事業を営んでいる方も少なくありません。一方、家族や従業員と一緒に事業している自営業者も、法人化していない限り個人事業主に含まれます。


〇国税庁(No.6109 事業者が事業として行うものとは)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6109.htm

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の内容については上記をご参照ください。

●個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人の相違点は、どのような立場で事業を営むのかという点です。日本では社会通念上、組織単位で人格を持ち権利能力を与えられている事業者のことを法人と呼びます。一般的な企業の他、公共団体や非営利団体も法人に当たります。法人でない事業者=個人事業主とするのが一般的です。

個人事業主と法人では、設立時・廃業時の手続きや、税金の仕組みが大きく異なります。独立を考えている方は、双方の違いを理解した上で、個人事業主を選ぶか法人を選ぶかを検討してみてください。

●個人事業主とフリーランスの違い

フリーランスとは、特定の企業などに所属しない働き方の総称です。会社員は会社と雇用契約を結んで働きますが、独立して業務を請け負うフリーランスは、自分のスキルを生かしながら、さまざまな顧客の仕事を遂行します。その意味ではフリーランスも個人事業主も同じです。

ただしフリーランス=個人事業主ではありません。フリーランスはあくまで「働き方」を表す呼び名であり、法人化の有無などによって税法による区分が異なるためです。

法人化していないフリーランスは、税法上個人事業主に位置付けられ、所得税の確定申告をします。フリーランスで法人化している方もいますが、その場合は法人税の確定申告が必要です。

またフリーランスの中には、個人事業主として開業届を提出していない方もいます。開業届を提出していなくても、所得が20万円を超える場合は、雑所得として確定申告が必要です(※)。


〇国税庁(確定申告が必要な方)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/b/01/1_06.htm

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の確定申告の必要条件については上記をご参照ください。

●小規模事業者と個人事業主の違い

個人事業主のことを小規模事業者と呼ぶ場合もあります。商工会議所の補助金制度を活用しようと思った際に、この言葉を目にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。中小企業基本法では、小規模事業者のことを業種別に以下のように定義しています。

● 製造業その他……常時使用する従業員が20名以下
● 商業(卸売業・小売業)・サービス業……常時使用する従業員が5名以下

また小規模事業者支援法、中小企業信用保険法、小規模企業共済法の3法では、宿泊業及び娯楽業を営む従業員20名以下の事業者も小規模事業者と定義しています。個人事業主であれば、ほとんどの場合、小規模事業者の定義に当てはまるでしょう。

なお小規模事業者向けの補助金を受けるには、小規模事業者であることはもちろん、申請時点で事業者として開業している必要があります。その他にもさまざまな条件があるため、補助金制度の利用を検討している方は窓口で相談してみましょう。

〇中小企業庁(中小企業・小規模企業者の定義)
https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html


〇全国商工連合会(小規模事業者持続化補助金<一般型>第 12 回公募 公募要領)
https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_koubo_ver7.pdf


※掲載の情報は2023年7月7日時点のものです。最新の分類については上記をご参照ください。

■個人事業主として開業するメリット

個人事業主として開業すると、さまざまなメリットがあります。主なメリットとして、ここでは次の7つを見てみましょう。

●開業手続きが簡単で費用がかからない
●税務申告(確定申告)が簡単
●利益が少ないうちは税負担が少ない
●経理などの事務負担が少ない
●働く場所の自由度が高い
●能力次第で大きな収入アップを目指せる
●働ける年齢に制限がない

・起業に必要な費用は? 初期費用とランニングコストについて解説

●開業手続きが簡単で費用がかからない

個人事業は法人設立に比べて開業手続きに手間や費用がかかりません。所轄の税務署に開業届を提出するだけで開業できます。開業届は郵送も可能なため、必要なコストは切手代または交通費くらいでしょう。

一方、法人を設立する際は、登記や定款などを作成して法務局での手続きが必要です。費用も定款認証費用や登録免許税などが発生し、約20〜30万円のコストが発生します。

また法人の設立までには時間も必要です。定款の作成や登記までには早くて1週間、長ければ1ヵ月以上かかるケースもあります。一方個人事業主の登録は、早ければ半日もあれば終わります。

廃業時も、法人の場合は解散登記や清算結了登記などの手続きに時間とお金がかかります。一方、個人は税務署へ「廃業届」を提出するだけで手続きは終了です。

●税務申告(確定申告)が簡単

個人事業主は毎年、確定申告をする必要があります。申告の手間は法人に比べると簡単で、最近では簡単に操作できる経理ソフトや、インターネット経由で利用できる無料の確定申告ソフトもあります。利用すると簿記や税務の基礎知識がなくても、簡単に確定申告書の作成が可能です。

一方、法人税の確定申告を税務の知識がない状態で行うのは、少々ハードルが高いことといえます。そのため、法人では税理士に申告書の作成を依頼するケースが大半です。個人事業主も税理士に依頼できますが、法人の確定申告書作成に比べて、税理士に支払う報酬は安いケースがほとんどです。これは税理士の手間が少なくて済むがゆえの価格差でしょう。

●利益が少ないうちは税負担が少ない

個人事業は所得税、法人は法人税を納めますが、利益の少ないうちは、法人より個人事業の方が税負担は軽くなります。

資本金1億円以下の法人は、所得に対する法人税率が15〜23.2%かかります。一方、所得税は所得金額が約195万円までなら税率5%、約330万円までは10%の税率です(※)。所得金額330万円以上で税率20%となり、初めて法人税率を超えるケースが出てくる仕組みのため、利益の少ないうちは個人事業主の方が税負担が軽くなるでしょう。

課税対象となる所得は売上から経費や各種控除を差し引いた金額のため、実際の売上が約330万円より多くても、税率10%の範囲に収まるケースも多いはずです。そのため、最初は個人事業主の立場で開業し、利益が増えて所得税が高くなったら法人化する、という流れで拡大していく事業も少なくありません。


〇国税庁(法人税の税率)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm


〇国税庁(所得税の税率)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の税率については上記をご参照ください。

●経理などの事務負担が少ない

個人事業主は法人と比べて、経理や社会保険の手続きなどに必要な事務負担が少ないケースがほとんどです。法人化すると一人社長の組織であっても、健康保険料・厚生年金保険料などを源泉徴収し、定期的に納付しなければなりません。

また個人事業主は売上から経費を差し引いた額が個人の収入ですが、法人化すると会社が自分に払った給料が、個人の収入となります。ということは法人として、自身の給与計算や所得税の源泉徴収もしなければなりません。もちろん年末調整も必要です。

事務負担が法人に比べると少なくてすむのは、個人事業主のメリットの一つといえるでしょう。

●働く場所の自由度が高い

働く場所の自由度が高いのも、個人事業主のメリットで、自宅を仕事場とする個人事業主も少なくないでしょう。

ただし、自宅では「オン・オフの区切りが付かない」「家族がいて仕事に集中できない」などの悩みを抱える個人事業主もいます。そうした場合はカフェやコワーキングスペースなどを利用するのがおすすめです。好きな街の好きな場所で、効率よく仕事ができるでしょう。

●能力次第で大きな収入アップを目指せる

自分の能力や努力次第で大きな収入アップを目指せるのも、個人事業主の魅力です。

会社に勤めていると、どれほど事業に利益をもたらしていても、給与には自身の貢献した利益分がそのまま反映されるということはありません。人事評価の際に他の社員とのバランスが加味されて、成果が昇給に結びつかないケースもあるでしょう。

その点個人事業主は、自分の挙げた成果が収入に直結しやすい働き方といえます。自分の裁量で仕事ができるため、上司の判断を仰ぐこともなく、自己責任でのチャレンジも可能です。能力や頑張り次第で大きく収入を伸ばすことも夢ではありません。

●働ける年齢に制限がない

会社員の多くが60〜65歳で定年を迎えますが、個人事業主には定年がありません。加齢でスキルが衰えない限り、70歳を超えても80歳を超えても働き続けることが可能です。

老後の公的年金に不安がある方なら、個人事業主として働きながら収入を得る選択肢もあります。好きな時間に好きな場所で働ける個人事業主なら、年齢を重ねても続けやすいはずです。

■個人事業主のデメリット

※image photo

個人事業主はメリットばかりではなく、デメリットもあります。個人事業主として働くなら、デメリットも理解しておくことが大切です。ここでは次のデメリットについて解説します。

●社会的な信用度に劣る
●融資を受けにくい
●自分で確定申告を行う必要がある
●利益が多くなると税負担が重い
●人材採用で不利

●社会的な信用度に劣る

例えばインターネットショッピングを利用する際、個人が販売している商品より、企業が販売している商品の方が、安心できると考える方は多いのではないでしょうか。このことからも分かるように、ビジネスは信用をベースに成立しています。「相手を信用しているからこそ成立する」というケースも少なくありません。

個人事業主のデメリットは、法人に比べて社会的な信用度が低い傾向にあることです。先述の通り個人事業は法人のように登記しなくても、開業届の提出だけで始められるため、誰でも手軽に始められます。その分、スタートアップ時点での社会的な信用が、法人より低く捉えられやすいのです。

信用度が低い個人事業主の場合、オフィスを借りようとしても、賃貸オフィスの契約時に審査が通らないということもあり得ます。

●融資を受けにくい

個人事業主は法人と比べて、金融機関からの融資を受けにくい傾向にあります。融資を受けにくいのは、事業の現状が把握しにくいためです。

法人は損益計算書・貸借対照表などを作成して決算書を作成するため、金融機関も業績の現状を把握しやすい傾向があります。一方、個人事業主の場合、確定申告書や通帳などの限られた根拠でしか事業の現状を把握できません。

事業資金と生活資金の線引きが難しいのも、事業の現状を把握しにくくしている要因の一つです。個人事業主の中には生活費と事業費を同じ口座で管理しているような場合もあります。個人事業主として金融機関からの融資を受けやすくするには、生活費と事業資金を明確に分けておき、生活費の口座とは別に事業用の口座をつくるなどの工夫が必要です。

●自分で確定申告を行う必要がある

前述したように個人事業主は毎年、所得税を確定申告する必要があります。会社員なら年末調整をするだけで、申告は会社が行ってくれるため、個人の手間はそんなにかかりません。個人事業主の確定申告書作成は、法人税の確定申告に比べて容易ではあるものの、それでも一人で年間の経費を計算して書類を作成するには多くの時間と労力がかかるでしょう。

個人事業主で確定申告が必要なのは、年間の所得が48万円以上あるケースです。所得が48万円以下であれば基礎控除の範囲内のため、確定申告の必要はありません。所得がゼロまたはマイナスの場合も、確定申告は不要です。


〇国税庁(基礎控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の基礎控除額については上記をご参照ください。

●利益が多くなると税負担が重い

所得税は利益が増えるほど税率が高くなる累進課税制度を採用しているため、個人事業主の場合、利益が一定水準を超えると、法人よりも税額が多くなります。

法人よりも税負担が重くなる水準は、一概に言えません。業態ごとにかかる経費が変わってくるためです。一般的には、年間売上約800〜1,000万円が一つの目安とされていますが、個人によって差は生じるため、自身のケースが気になる方は、税理士に相談してみてください。

また、所得が290万円を超えると、個人事業税も課せられるようになります。個人事業税は個人事業主が都道府県に納める地方税の一つです。税率は業種や所得額によって変わり、東京都の場合は0.75〜7%となっています(※)。


〇東京都主税局(法人事業税・法人都民税)
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/houjinji.html#ho_03_02

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の税率については上記をご参照ください。

●人材採用で不利

個人事業主が従業員を採用しようとする際も、法人より人材採用が不利になる傾向があります。個人事業主が運営する職場では、福利厚生や社会保険などが不十分なイメージもあるためです。

法人は厚生年金・健康保険の加入が義務のため、求職者にとっては安心感があります。一方個人事業主が人材を募集しても安心感の違いから、法人に比べると応募が集まりにくいかもしれません。

●その他のデメリット

その他にも、個人事業主には次のようなデメリットがあると考えられます。

まず病気やケガで働けなくなると、収入が途絶えるかもしれません。毎月の給与が保証されていた会社員時代に比べると、収入は不安定になりやすいでしょう。

会社員時代には会社が半分負担してくれていた社会保険料も、個人事業主になると全額負担しなければなりません。

特に大きいのは老後の生活を支える年金です。会社員は基礎年金の上乗せとして、厚生年金に加入できます。しかし個人事業主の義務は国民年金のみとなり、あとは自助努力をするしかありません。

国民年金だけの場合、将来に受け取れる給付は満額で月約65,000円です(※)。個人事業主として老後に備えるためには、国民年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)への任意加入も検討する必要があるでしょう。


〇日本年金機構(令和4年4月分からの年金額等について)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2022/202204/040103.html


〇全国国民年金基金(国民年金基金とは)
https://www.zenkoku-kikin.or.jp/about/


〇厚生労働省(iDeCoの概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/ideco.html

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の国民年金の給付額などについては上記をご参照ください。

■個人事業主になるための手順

それでは、個人事業主になるには具体的にどうするとよいのでしょうか。順を追って個人事業主になる手続きを紹介します。

●税務署へ開業届を提出

前述したように、個人事業主になるには、開業届を納税地の税務署に提出する必要があります。個人事業主が自宅で仕事をする場合の納税地は、住所がある市区町村です。

自宅以外の市区町村にあるレンタルオフィスなどに事務所を構える場合は、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を、住んでいる市区町村の所轄税務署長に提出する必要があります。

開業届の用紙は税務署に置いてあります。用紙は国税庁のWebサイトからもダウンロード可能です。書き方が不明な場合、所轄の税務署で教えてもらうこともできます。


〇国税庁(新たに事業を始めたときの届出など)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の手順については上記をご参照ください。

●屋号の決定

開業届には屋号の記入欄があります。屋号とは店名や事務所の名前のことです。店名なら「〇〇屋」「〇〇商店」「〇〇サロン」、事務所の屋号なら「〇〇事務所」「〇〇企画」「オフィス〇〇」などと記入しましょう。

本名で働く場合、屋号は使用しなくても構いません。著述家・画家・芸能関係者などで、本名以外を使って仕事をしている場合は、その名前が屋号になります。
屋号が決まっていない場合、開業届を出した後に屋号を付けても構いません。後から屋号を付ける場合は、次回の確定申告で申告書の屋号欄に名称を記載するだけで登録できます。また、屋号を変更する際の手続きも、確定申告書に新たな屋号を記入するだけです。

●クレジットカードの発行・銀行口座開設

個人事業主として開業するなら、個人用の銀行口座とは別に、事業用の銀行口座を開設しておくとよいでしょう。事業専用口座で事業の入出金を記帳すると、事業資金と生活資金が明確に区別できるようになるためです。

事業専用口座があると、取引先からの信用を得やすくなり、融資の審査も受けるときも資料を提示しやすくなります。

クレジットカードも事業用のものを用意しておくと、事業での出費がわかりやすくなり、経費の計算も楽になります。使用記録を会計ソフトにデータ連携させれば、確定申告書も作成しやすくなるでしょう。

●青色申告承認申請書を提出

開業届を提出するときは、一緒に「青色申告承認申請書」も提出しておきましょう。

個人事業主は、白色申告か青色申告かを選択できるため、白色申告を選ぶなら、青色申告承認申請書は提出しなくて構いません。それでも提出しておくと、確定申告で有利になります。青色申告にはさまざまな特典があるためです。

青色申告の特典の一つが、所得金額から最大65万円を控除できる青色申告特別控除です。節税したいなら提出しておくとよいでしょう。

ただし、青色申告を選ぶと、複式簿記での記帳などが義務付けられるため、帳簿はより厳密に管理する必要があります。


〇国税庁(青色申告特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の青色申告特別控除額については上記をご参照ください。

●地方自治体へ事業開始等届出書を提出

税務署に開業届を提出するだけでなく、都道府県税事務所と市区町村にも「事業開始等申告書」を提出しましょう。

事業開始等届出書の正式名称や届出期間は都道府県によって異なります。自分の都道府県の詳細を知りたい場合は「都道府県名+事業開始等申告書」で検索してみましょう。申告書の提出方法や提出期限が調べられます。

●社会保険や市民税の手続き

従業員を雇って労働保険の適用事業者となった場合は、労災保険・雇用保険に加入する必要もあります。労災保険は労働基準監督署、または公共職業安定所(ハローワーク)で、雇用保険は公共職業安定所で加入手続きをしてください。

家族を従業員として給与を支払い、必要経費にしたい場合は「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を提出しましょう。源泉徴収した所得税の納期を半年に変更するのに必要な「源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書」も提出しておくと、半年に一度まとめて手続きできて便利です。

個人事業主にオフィスは必要?

自由な働き方ができる個人事業主ですが、オフィスは必要です。まず税務署へ開業届を提出するにあたって、住所地や事業所を設定しなければなりません。また仕事の生産性を高めるには、オフィスに十分な設備を設けて働きやすい環境を整える必要があるでしょう。

さらに、オフィスの住所・立地は、取引先や顧客に与える印象にも影響しやすいです。有名なビジネス街などにオフィスを構えれば、事業のブランド力を訴求でき、信頼を勝ち取ることにもつながるでしょう。

●個人事業主に向いているオフィスの種類

個人事業主のオフィスにはさまざまな選択肢がありますが、おすすめはレンタルオフィスの利用です。

最も手軽といえるのは、自宅をオフィスとして利用し、そのまま自宅の住所をオフィスとして公開するパターンです。バーチャルオフィスを借りて公開用の住所を取得したり、必要なときだけシェアオフィスを利用したりするのも良いでしょう。ただし先述したような生産性の高いオフィスや、ブランド力を高められるオフィスを求めるのであれば、これらの方法は最適とはいえません。

また長期的な目線でオフィスを構えるのであれば賃貸オフィスへ入居するのも一つの手ですが、初期費用・ランニングコストが高額になりがちです。

その点レンタルオフィスなら、賃貸オフィスほどのお金をかけなくとも、しっかりとした環境を整えられるはずです。レンタルオフィスとは、一定期間の契約によって借りられる、デスクや内線設備 など仕事に必要なものがあらかじめそろったオフィスのことです。施設によっても異なりますが、専有部分と共有部分があるレンタルオフィスが多く、空間をフレキシブルに活用できるでしょう。インテリアにこだわったレンタルオフィスや、駅近など一等地にあるレンタルオフィスを選べば、当然ブランドイメージの向上も期待できます。その他、事業の拡大に伴って徐々に広いオフィスに引っ越すなど、状況に合わせた活用もしやすくなると考えられます。

■個人事業主として開業する際に知っておきたいこと

※image photo

最後に、個人事業主として事業を始める際に知っておきたいことを紹介します。脱サラして個人事業主として独立する方や、事業を早く軌道に乗せたい方は、参考にしてみてください。

●個人事業主は失業手当がもらえない

雇用保険に加入していない個人事業主が廃業しても、失業手当は受け取れません。それは当然ですが、注意したいのは会社員から個人事業主として独立する場合です。

失業保険は、あくまで失業中で、再就職先を探している場合に支給されるのが前提です。会社を辞めてすぐに個人事業主として開業届を出した場合、失業手当は受給できません。開業届を出した個人事業主は、求職中の失業者の要件に当てはまらないためです。

受給してしまった場合、悪質度に応じて「返還命令」や、給付額の2倍相当額を請求される「納付命令」などの処置を受ける場合があります。


〇厚生労働省(正しく申告し、正しく受給しましょう!」
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/var/rev0/0133/4100/2017731111728.pdf

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。最新の制度については上記および厚生労働省の公式情報をご参照ください。

●活用できる助成金がある

個人事業主が活用できる助成金や補助金も知っておきましょう。助成金・補助金は国や地方自治体から支給されるものであり、返済は不要です。活用して事業に役立ててください。

個人事業主が受給できる補助金の代表的なものに「小規模事業者持続化補助金」があります。販路開拓・生産性向上に取り組む事業者を支援する制度で、小規模事業者が補助の対象です。

小規模事業者持続化補助金には、50万円を上限に販路開拓に必要な経費の3分の2を補助してもらえる「通常枠」や、創業したての小規模事業者の販路開拓に必要な経費の3分の2を上限200万円まで補助してもらえる「創業枠」などが用意されています(※)。

他にも「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」、新型コロナウィルスの影響で事業が停滞した中小事業者を対象とした「事業再構築補助金」など、さまざまな助成金・補助金制度があります(※)。

助成金・補助金には期限の設けられている制度もあるため、今、利用できるものにどのような制度があるかをこまめにチェックするとよいでしょう。


〇小規模事業者持続化補助金事務局
https://r3.jizokukahojokin.info/index.php


〇小規模事業者持続化補助金<一般型>第12回公募 公募要領
https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_koubo_ver7.pdf


〇全国中小企業団体中央会(ものづくり補助金総合サイト)
https://portal.monodukuri-hojo.jp/


〇中小企業庁(事業再構築補助金」
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/

※掲載の情報は2023年2月24日時点のものです。小規模事業者持続化補助金の最新情報などについては上記をご参照ください。

■まとめ

社会的信用度を高めるため、そして、安定した収入を得るためには、自身の力量が問われますが、働く時間や場所を自分で選べる自由度の高さは、個人事業主の最大のメリットといえるでしょう。
仕事のリモート化や働き方改革が進み、レンタルオフィスやサービスオフィス、ワーケーションなど、働く場所やワークスタイルの選択肢が増えた今、好きな仕事を好きな場所でできる喜びは、個人事業主だからこそ味わえるのかもしれません。

個人事業主として独立するなら、レンタルオフィスを設けることも検討してみましょう。賃貸借契約を要する賃貸オフィスの審査をクリアするのが難しくても、レンタルオフィス・サービスオフィスなら個人事業主も借りられる可能性があります。

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