Forbes JAPAN Web 2020.03.06 配信記事より転載

スモールビジネスのみならず、大企業の分室や新規プロジェクトの社外拠点、海外企業の日本進出時における拠点としても機能し、生産性やイノベーションを生む力を高めるための支援が目的だという「H¹O」。実際に、日本橋・室町のオフィスに入居した再生医療のスタートアップ企業セルージョン代表取締役の羽藤晋と、H¹Oを提供する野村不動産都市開発事業本部ビルディング事業一部の佐藤夏美が、クリエイティビティやイノベーションに大きな影響を与える「場」の大切さについて、入居企業とデベロッパー、それぞれの立場から語った。

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<目次>

働き方改革の意識が世の中に浸透したことで、労働時間を削減するとともに、個人のパフォーマンスの向上や、イノベーションの創出といった、企業としての付加価値を生み出そうとする動きが加速している。しかし、従業員数が少ない小規模企業やスタートアップ企業は、こうした働き方改革に着手できていない状況が多い。経営者自身も理解はしているが、手が届かないという実態もあるだろう。会社としてどうこの課題に挑むべきか。現在、従業員10名未満の小規模企業は全国で30万社以上あり、これは全企業の約8割にあたる。小規模企業にとってインフラ整備や備品の調達などはコストであり、できるだけ費用を抑えたいと考えがちになるのが一般的だ。しかし一方で、生産性の向上やイノベーションの創発のために心地よく働き、クリエイティビティを発揮できる「場」への需要が高まっているのも事実。これまで、小規模企業向けのオフィス市場では、小さくても機能面やデザイン性に優れたオフィスが少なく、”10人以下で入居できる、綺麗で設備が整ったオフィスを見つけたい””採用面から見栄えの良いオフィスに入りたい”。そんなニーズに応えるオフィスの供給不足が浮き彫りになっていた。そうした市場の課題を解決するべく、野村不動産が展開をスタートした新しいオフィスブランドが「H¹O(エイチワンオー)」だ。「H¹O」は、従業員10人未満の小規模企業向けに、「個」のポテンシャルを最大化することをコンセプトに掲げるサービス付きオフィス。2019年11月、第一弾のオフィスが日本橋・室町に、そして、2020年3月6日、西新宿に第二弾のオフィスが開業した。今後も、日本橋・小舟町(5月)や渋谷三丁目(10月頃)に開業を予定するなど、都内各所にオープンする予定だ。

3月6日開業「H¹O 西新宿」ラウンジ

──セルージョンでは、どんな事業を展開されているのでしょうか。

羽藤晋(以下羽藤):私は眼科医として角膜移植に携わってきました。今、グローバルで角膜移植のドナー数は限られているという課題があります。そこで、セルージョンではiPS細胞を用いた再生医療という、新しい治療法の開発を行っています。

──今までさまざまなフェーズがあったと思いますが、事業展開する上でどんな課題がありましたか?

羽藤:医者は往々にして世間知らずのことが多いので、事業立ち上げ時に登記や法律について一から学びました。設立当初は私一人でしたので、自宅兼オフィスで働きましたが、個人宛と会社宛ての郵便物が混在する有様でした。それらを整理するために時間を採られ、生産性を落とした記憶があります。

その後、スタッフが3〜4人に増えたタイミングで、シェアオフィスを探すことになりました。私たちは信濃町にある慶応大学医学部のラボとの行き来が発生するため、アクセスを重視して青山一丁目に拠点を置きました。ただ、小さな会議室が狭くモニターがなかったり、共用部分でWi-Fiが弱かったりとか、多少の不便はありました。その後、資金調達を実施し、さらにスタッフが増えたため移転を意識するようになりました。

数ある候補物件の中から「H¹O」に入居を決めた理由を教えてください。

羽藤:まずは何より、スタッフが働きやすい環境であること。また、他の企業や共同開発グループが来訪した際に広い会議室があること。ブレストなどちょっとした打ち合わせをすることができるフリースペースがあるのもいいですね。

私たちが一番重視したのが、臨床試験に向けて新たに開設した日本橋室町ラボとの距離感です。一日に何度もラボとの往復が必要となるため、移動に時間を取られては研究開発の時間を失ってしまいます。私たちが最も注力するのは研究なので、それ以外の負担はできるだけ軽くしたいのが本音です。そういう意味で「H¹O」には、複合機や溶解ボックス等最新のインフラが既に整っていることは嬉しいですね。受付スタッフの方が来客対応等してくださるのも助かります。企業秘密の情報を扱う上で、顔認証によるセキュリティがしっかりしているのも安心です。

私たちは「時間=コスト」という考え方なので、無駄によって生じるコストは致命的です。だから、オフィスの賃料をコストとは考えず、時間短縮、その先にある生産性やパフォーマンスの向上のために必要な投資と考えています。

──佐藤さんにお聞きしますが、「H¹O」というブランドが生まれたきっかけは何でしょうか。

佐藤夏美(以下佐藤):10人未満の少数精鋭で働く方々のニーズに変化を感じたのがこのオフィスビルブランドのスタートです。数十年前までは、少数精鋭で働く人と言えば、弁護士・コンサルタントといった、一般企業とは異なる職種の方々が多かったと思います。しかし、最近では、時代の流れとともに、革新的なサービスや商品を生み出す、少数精鋭のスタートアップ企業が増加しています。専門分野に特化して研究開発やサービス改善を行い、日本社会の常識を変えるような企業も増えてきました。そして、彼らにはキャッシュが集まりやすい資金調達構造になりつつあります。

キャッシュに余裕が出てくると、当初は抑え気味だったオフィス環境への考え方がアップデートされるようになります。社員のパフォーマンス向上や優秀な人材の確保、また、情報セキュリティの強化が必要となるのです。ここに投資しようとする企業の需要に、野村不動産として応えていきたいと考えたのです。

「H¹O」は、IoTによるオフィス利用状況の見える化や、生体認証システムによるキーレスセキュリティ設計など、最新テクノロジーを採用し、快適性とセキュリティを重視した環境を整えています。一見すると細かい部分ですが、自前で整備するのは中々難しい部分でもあり、セキュリティ環境を重視する方や、快適さやストレスフリーを求める方にお喜び頂いています。

生体認証システムによるキーレスセキュリティ設計

また、普段仕事をする場としては、入居される企業の皆様が作業に集中できる、セキュアかつ快適な個室空間にもこだわっています。防音面や全室個別空調設置などは社内で何度も議論や試験を行いました。

「H¹O 西新宿」専有個室(定員13名)

一方で、柔軟に働き場所を選べるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の考え方に基づいて、気軽に会議や食事ができるフリースペースを用意しています。来訪されるお客様の対応や、入居企業さまのおもてなしをサポートする有人レセプションサービス、オフィス家具、複合機やモニターといったファシリティの設置に関しても、機能性だけでなくデザイン性を重視し、清潔感のある空間を作り上げていることも大きな特徴です。

──コワーキングスペースとの違いは、どの点にあるのでしょうか。

佐藤:コワーキングスペースはシェアスペースを効率的に使うことによって、コストパフォーマンスを高めるもの。共用部重視の設計なので、働く場所は基本的にオープンスペースです。開かれた場で働くので、他業種の企業との出会いやコミュニティ形成が生まれ、それが新しいビジネスの機会やイノベーションを生むことに繋がることもあると思います。

「H¹O 日本橋室町」共有ラウンジ

「H¹O」は、そうしたオープンな環境も残しつつ、基本的に普段働く場は、より本業に集中でき、生産性とモチベーションを高く保てるクローズドな専有の個室空間です。

空調や換気を個別に設定できるようにしたのもその一貫ですね。共有ラウンジもあるのですが、ここは入居企業のみが利用できる空間です。その時の状況や気分に合わせて、例えばカウンターテーブルで個人作業に没頭したり、ソファスペースで談笑しながらリラックスしたり、軽く食事をとったりと、色々な使い方ができます。意識したのは、働く個人一人ひとりのニーズに寄り添い、心身の健やかさや心地よさ、豊かな感性を生み出してもらうことです。週に1度、健康を意識した朝食を、入居企業の皆様に提供する、ということも実施しています。

週に1度提供されるヘルシーな朝食

佐藤:たとえば複合機を共有する際、セキュリティ面を重視し、最初はクラウド上で作業頂く方法を選択していました。ただ、「もっと簡便にしてほしい」というオーダーがあり、オペレーションを変更しました。

羽藤
:セキュリティを重視しすぎると利便性が劣るので、そのバランスが難しいと思いますが、こうした対応をスピーディーに行っていただけるのはありがたいです。

佐藤
:オフィスを運営していく中で、入居企業の声に耳を傾けて、一番皆様にご満足いただける形を探っていきたいと思っています。室町でスタートしましたが、こうした柔軟な対応を後続物件にも反映していきます。

3月に開業した「H¹O 西新宿」では、近年、関心が高まっている「バイオフィリックデザイン」の考えに基づく空間デザイン思想を採用します。緑や光、水といった自然の要素を取り入れる事で、精神的、肉体的な幸福度を向上させることを目的とした空間デザインです。また、人が集まる場でのウイルス感染予防を目的に、紫外線による空気環境対策システムを導入しています。

ころに緑や光、水といった自然の要素を取り入れている

──クローズドな場の提供をする意味はどんなところにあるでしょうか。

佐藤:「H¹O」のヒントになったのが、2008年に立ち上げ、現在は都内で37棟ほど展開している、中規模オフィスビル「PMO(プレミアム ミッドサイズ オフィス)」です。「PMO」は、20~30名ほどの中規模企業に1フロア貸しを行います。「PMO」を運営する中で、複数の企業様から、「自分たちの『城』としての環境を整備したい」という要望がありました。資金調達や採用面にも関わる、企業信用力やブランド力を考慮してのオフィス選びが増えるかもしれないと、その時感じました。

取引拡大やアライアンスというのは、偶発的に起きるわけではないと明言されている経営者の方は多くいらっしゃいます。だからこそパーティーやイベントだけではなく、重要なパートナーや提携先とはオフィスでつながる。つまり、「会社の顔としてのオフィス」というものを意識されているのです。

──羽藤さんは、「H¹O」移転でオフィス環境への考え方がどのように変わりましたか。

羽藤:バイオベンチャーで成長するには、特にアーリーステージでは良質な人材確保が重要です。人を新しく採用しようとしても、オフィスの見た目やグレード感が低いと、モチベーションが下がったり、入社を躊躇してしまったりすることもあるかもしれません。

また、研究開発という事業の性質上、予定通りいかないことが多くあるので、例えばラボとバックオフィスの移動や、荷物の受け取り対応など、本業に割く以外の時間をできるだけ省いて、生産性を上げていきたい。そういった意味で、オフィス環境を整えることは必然なんです。

我々スタートアップ企業にとって、「H¹O」がイノベーションを生むためのベストソリューションであるとも言えるのではないでしょうか。「H¹O」の今後の展開が非常に楽しみです。うちの会社も協力させていただき、共に発展していけたらと思います。

佐藤
:私たちは働く人たちが成果を生むために、生産性を高めるオフィス環境を提供し、フレキシブルに心地よく働ける場を追求していきたいと思います。オフィスで働く人一人一人のニーズに寄り添った、「ヒューマン・ファースト」の考え方が「H¹O」に貫かれているのです。

「場」としてのオフィス環境のアップデートを視野に入れるスタートアップ企業。「ネクストスタンダードの作り手」である彼らが働く上で、スモールビジネスを成長させるのに欠かせない最適な「場」を提供するのが、「H¹O」の大きなミッションだと言えよう。

text by Forbes JAPAN BrandVoice Studio / photographs by Tatsunori Iwama

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